海外情報紹介 Liese氏はEU ETSの空域提案を支持するという、欧州議会の委任を受け、収入の使い道に照準を合わせる。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1817

 2014年1月30日木曜日−欧州議会の環境委員会(ENVI)は今日、欧州内を離発着する全便による、EU/EEA空域内の排出物を規制対象にすることを目指す、欧州委員会の空域提案支持に賛成して49対6で票決した。環境委員会はまた、欧州委員会が提案したように、空域による規制を2020年までというより2016年までに制限しようとする欧州委員会提案への修正及び、EU ETSの排出枠取り引きの収入を気候関連の財源にあてるという、EU加盟国による法的拘束力のある誓約をこの欧州指令への導入を、可決した。この票決により、その立法化について欧州連合理事会を通じて欧州委員会と加盟国との交渉を行うための権限委任がEU ETS指令の報告責任者であるPeter Liese氏に対して行われた。加盟国の大部分は欧州委員会提案に反対で、2012年の間だけは規制対象をEU/EEA内のフライトの排出物に制限するという『時計を止める(STC)』取扱いの継続を望んでおり、これは産業委員会と運輸委員会(ITREとTRAN)の欧州議会議員も同様であり、2月と3月に予定される合意を得るための三者会談では激しい議論になりそうである。
 Liese氏いわく、ENVIの投票は、EU ETS指令の完全実施に戻ることを望む欧州議会議員のGreen党とエアライン団体1つ(欧州低運賃エアライン協会)の立場、ICAOが市場に基づく国際対策による解決に至るのを待つためのSTCの継続にそれぞれ賛成の票決を行ったITREとTRANの立場、この2つの間の、公平な歩み寄りを反映しているとのことだ。

 しかし、同席した欧州議会議員のChris Davies氏が、ITREとTRANの意見がひっくり返されるような、このような案件は欧州議会全体で検討されるべきだと言ったため、ENVIの投票は居心地の悪いものとなった。「この件ではPeter Liese氏を支持せざるを得ないが、大いに非民主的な手順で行われることに大変居心地の悪さを感じている。」と彼は環境委員会の席上で述べた。

 ITREの報告者であるEija-Riitta Kohhola女史は、投票の結果は「望ましくないもの」であったと言い、以下のようにツイートした。:「たとえLiese氏が欧州議会の大多数の意見を代表していなくても、我々は彼に交渉の権限委任をしなければならなかった。ITREとTRANが欧州委員会の計画を拒否したことに注目することは重要なことである。我々は貿易戦争を望んではいない。ENVI委員会に委託された権限は並外れて弱いもので、これは三者会談において配慮されるべきである。」

 この件は−委員会の間で意見が一致しない案件の場合に通常とられる措置ではあるが−欧州議会の総会にかけなければならないので、それでは現在のSTC指令が期限切れになる4月終わりまでに法律を通過させる時間的余裕がないことになり、難しい局面であるとLiese氏は述べた。TRANから取られた要素もいくつかあるが、たとえ委員会の報告者が三者会談に参加しても、それについては「俎上に載ることはない」と譲歩したと彼は述べた。航空機運航者についてEU ETS排出量の上限を厳しくし、排出枠取り引きのレベルを上げるというLiese氏の提案は2委員会との妥協案に含まれている。

 彼は最終的なENVIの投票前に欧州議会議員の同僚らに対し、「たとえ100%満足ではなくても何も決定がされないよりはまだましであるとして、この権限委任を支持するよう」頼んだ。

 三者会談の会議は2月18日と3月4日に予定され、「交渉が簡単には進まないことが確かなので、」できれば3回目を3月の終わりまでに行うと、Liese氏は投票後の記者会見で語った。この交渉ではあらゆる方面で譲歩せねばならず、柔軟に対応しなければならないと彼は述べた。

 特にLiese氏が譲りたくないと思っている論点のひとつが、排出枠取り引きによって加盟国が得る収入の使い道についてである。欧州議会は指令の原型に、気候関連の財源に収入の使途を限定する条項を入れようとしたが、加盟国にとっては受け入れがたいことが判明した。彼に委任された権限で、そして他の委員会に支持されて、Liese氏は現在、この問題が交渉の一部であると言い張り、加盟国が排出量取引の収入をGreen Climate Fundや空気を汚さない輸送技術の研究開発のような、国際的気候財源に割り当てるよう強制する、法的拘束力のある条項が新しい指令には付け加えられるよう模索していると述べている。

 もし収入がこの目的に使用されるなら、EU ETSに自国のエアラインを参加させることを第三国がもっと進んで受け入れるだろうとLiese氏は主張している。彼に言わせると、欧州委員会の提案によって2015年から空域を対象とする規制を実施するのに先駆けて、2014年にSTCを1年間延長するなら、発展途上国と航空産業の排出物低減を支援する気候対策の目的で収入を使用するという前提に基いて修正したEU ETSの規制範囲を、非EU国家が受け入れるよう説得するのに使用されるべきであるとのことだった。

 「第三国をこのプロセスに巻き込むことは重要である。」とLease氏は述べた。「空域方式を受け入れてもらうよう努力し、実効のある国際合意のための地ならしをする必要がある。私が第三国と会合を持つと常に、EU加盟国の財務大臣の権限下に収入を留保するという議論を耳にする。これは欧州議会が変更をもくろむ我々の法律の弱点である。」

 「これは加盟国が非常に神経質になる問題だが、この状況では誰もが柔軟で実用的なものである必要があると、理解している。」

 Liese氏は、欧州連合理事会との歩み寄りは速やかに行われなければならない。さもないと時間内に修正が間に合わずに、すべての大陸間便を規制対象とする元来の法律が自動的に5月1日から効力を発するだろう。「これはNGOのいくつかと、エアライン産業団体の1つが好む抜本的解決策ではあろうが、意欲的に過ぎて第三国との間に多くの問題を引き起こすことになるだろうと私は思う。」と彼は付け加えた。「だから、誰もが今譲歩する必要があるのだ。」

 元来の規制範囲と比べて、空域提案は航空機排出物の35%しか規制対象にしないとはいえ、Brusselsに拠点があるNGOであるTransport & Environmentは、少なくとも、排出物の大部分が発生する、長距離便は対象となるだろうとコメントした。

 ENVIの決定を歓迎して、T&Eの航空管理者であるBill Hemmings氏は言った。:「空域の規制範囲を支持することで、欧州地域全体に渡り、欧州内便と長距離便の全便の排出物をEU ETSが対象とすることを、欧州議会議員は今確実にしているところだ。この決定はまた、支持するのを気にしているようにみえる加盟国メンバーがあるなかで、EUの主権を強固にする。

リンク:

ENVI委員会
TRAN委員会
ITRE委員会
投票後のPeter Liese氏の記者会見
Transport & Environment

海外情報紹介 欧州の政治家、加盟国及びエアラインが描く今後の方向性が異なるので、航空関連のEU ETSが宙に浮く。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1815

 2014年1月27日月曜日−4月終わりまでにEU機関の決定が必要なのだが、いまだに航空に関するEU ETSの将来の方向性について、欧州議会とEU加盟国内のみならず、欧州エアラインの間でもかなりの意見の相違が残ったままである。欧州議会の運輸委員会と産業委員会のメンバーである欧州議会議員らは先週、EU/EEA空域内の全フライトからの排出物を規制しようとする欧州委員会の提案の内容を和らげるために投票を行った。この問題を担当する環境委員会は1月30日木曜日に投票を行うことになっており、欧州委員会提案を概ね支持している。3委員会の報告者達はこれから妥協点を探ろうとしているところである。一方で、欧州エアラインを代表する3つの事業者団体もまた将来のEU ETS像について意見が異なる。欧州議会と加盟国の間にはEU ETSの排出枠取り引きの収入をどう使うかについて大きな対立が存在している。
 先週木曜日に、環境委員会(ENVI)がこの問題について討論の場を設け、これからの進め方について欧州議会議員の間にたとえ意見の相違はあれど、大多数が欧州委員会の空域提案を支持したいと考えているように見受けられる。しかし、欧州議会における航空に関するEU ETSの報告責任者であるPeter Liese氏は、あらゆる面で譲歩が行われねばならないことと、欧州連合理事会を通じてEU加盟国との三者会談プロセスを開始する前に、3委員会の間で妥協点を見いださねばならないことを了承した。

 運輸委員会(TRAN)は『時計を止める』という、EU/EEA内を規制する適用制限の期間延長を希望しているとLiese氏は述べた。「それはとりあえず我々が考慮すべき選択肢だが、その一方で、2016年までこの状態を継続することは我々には受け入れがたい。」

 合意が得られる範囲として、EU ETSの排出枠取り引きの収入を気象関連の財源や排出物の少ない研究開発の財源に割り当てるという論点があるとLiese氏は述べた。この論点に関する欧州議会の立場は明快だとしても、加盟国は収入を担保することを拒絶してきたし、これが第三国からの批判を正当化したと彼は述べた。

 Liese氏はENVIの会議で述べた。:「我々が発信するメッセージの内容に、我々は細心の注意を払わなければならない。我々は現在、多くの抵抗にあっている。エアバス社は必死にこの空域提案と闘っているところである。中国が契約を破棄すると脅すなら、中国が我々に要望することをすることになりそうだ。」

 欧州委員会提案へのLiese氏独自の修正を支持しつつ、欧州議会議員のChris Davies氏は政治的影響をEUは受け入れるべきであると信じており、ICAOからどんな結果が出てくるのか確信がないと述べた。

 欧州議会議員でGreens党所属のSatu Hassi女史は、歩み寄りの気持ちが度を超していると述べた。「企業や他の国家が我々の法律に反対する場合には、我々が法律を変更するというメッセージを世界に向けて我々は送るべきではない。」と彼女は述べ、EUは『経済的には巨人でも政治的にはこびとである』と見られる危険がある、と付け加えた。

 オランダ人の欧州議会議員であるGerben-Jan Gerbrandy氏は言及した。:「これは気候変動と航空の問題というより、欧州の信用問題である。国際的な解決策を得るための本格的な進展が得られるようにICAOに1年間の猶予を与えるのだと我々は言ったのに、ICAOでは成果が出なかったのだ。やると脅して結局あなたがそれをしないなら、あなたの信頼性はどこにあるのだろうか?」

 「エアバス社にとって、これは経済的な脅迫で、脅迫のままでは済まないだろう。我々は欧州委員会を支持すべきで、欧州議会は断固として立ち向かわねばならず、決して経済的な脅迫に我々は屈してはならない。」

 欧州委員会提案に反対の立場で発言したのは英国保守党所属の欧州議会議員であるMartin Callanan氏とJacqueline Foster女史だった。

 「エアバス社は欧州で数万人の社員を雇用している。比較的小さい原則とそれに関わる小額の金額のために、エアバス社社員数万人に問題を引き起こす理由は何なのだろうか。」とCallanan氏は述べた。「我々は我々の原則に則ることはできるが、実際の影響に気づく必要がある。」

 Foster女史は欧州委員会の気候活動総局(DG CLIMA)が航空に関わるEU ETSを独断的に扱うことについて批判し、第三国との合意無く一方的なやり方で進めた結果について懸念を示した。「この問題で数十億ドルのエアバス社の注文が棚上げ状態になってしまった。率直に言ってこれは受け入れがたい。」と彼女は述べた。ICAO総会の結果を考慮して、EU ETS指令の適用を「無期限に保留するよう」彼女は要求した。規制対象をEEA内のフライトに制限することについても、欧州エアラインの公平な立場を失わせることにつながるので、抵抗すべきであると彼女は言い、この状態は欧州委員会がそもそも非合法と見なしてきたと彼女は信じているとのことだった。DG CLIMAの代理としてENVI委員会に対して行った声明で、Elina Bardram女史は、航空に関わるEU ETSは政治と原則を巻き込んだ複雑で能力が試される一件書類で、政治と原則が巻き込まれることは非常にまれであると述べた。

 大きな成果であると彼女が見なしている、10月に採択されたICAO総会決議に言及して、Bardram女史は言った。:「2020年以前に暫定的対策を採用する国家に関するパラグラフは、双方の合意を暗示すると理解する国家が数カ国ある。EUはその解釈にはきっぱりと異議を唱えて留保に入った。我々はもちろん、合意を得るための努力は継続するが、第三国の視点から望ましいという基準に則って我々の法を決めることはないだろう。」

 「我々の提案はICAO総会で決定されたことに沿った、心からの努力であり最良の企てである。後発開発途上国に適応する特定の条項を我々は作成した。我々はまた、主要な航空国家を含めた我々の協力国の多くが、実際に空域方式を提案した、ICAO総会に先立つ討論や会期中の討論を反映した。そうする内に、国際的な[市場に基づく対策]の成果を見越して、我々はかなり我々のETS法を縮小させた。環境への熱意の縮小は容認できると我々は感じた。というのも、その方策は将来実現し、我々がそれを成功のための最良の機会にしたいと信じているからである。」

 欧州委員会提案の下で、2014年までEU/EEA内へと適用を制限する扱いを延長することは、空域方式実施の前に技術的調整を行うために十分な時間を得ることになるとBardram女史は述べた。

 これまで提出された異なる提案の数は政治的選択と交渉まで煮詰まったと、彼女は言った。「選択肢評価のための重要な基準は管理の容易さ、安定性、耐久性及び、それらが良い規制の構成要素となるかどうかである。欧州委員会の提案はこの基準に合っているように我々には思える。政治的承認の問題があり、それは、我々がどこまで進んで適応したいと望むかにかかっている。」

 「欧州委員会の提案が行われてから、特に産業界の協力者達の中には懸念を表した者がいることは周知のことだが、どのような選択肢なら彼等が完全に同意するのか現在では明らかでない。我々の提案は法的にも技術的にも適切であり、公平な立場を保証する。同じ航空路の運航者はすべて公平に扱われる。」

 世界規模で運航する国際的エアラインを代表するIATAが、国際方式を導入しないまま、EU ETSを完全に保留することを望む一方で、欧州エアラインの業界団体は異なる意見を表明している。

 EEA外のルートも運用する主要エアライン30社の加入する欧州エアライン協会(AEA)は、欧州委員会提案の規模を縮小しようとする先週の運輸委員会(TRAN)の投票を歓迎し、産業委員会(ITRE)−こちらはその後TRANと同意見の投票を行った。−とENVIにおいて先例に倣うよう、欧州議会議員に要請した。

 AEA曰く、TRANの決定は、第三国からの報復手段に欧州エアラインがさらされかねないという理解をはっきり示した。「AEAはTRANが航空関連ETSの規制対象を欧州経済地域内のフライトに制限することを歓迎する。」とAEAは声明で述べた。「この動きが国際論争の危険性を減らし、国際航空による排出物のような世界規模の問題は世界規模の解決策が必要であることを追認する。」

 AEAのCEOであるAthar Husain Khan氏は付け加えた。:「航空関連ETSは国際航空の排出物低減に関する国際合意を得るためのICAOでの進展を妨害してはならない。」

 2017年から2020年までの状況に関して不確定要素があり、エアラインには長期にわたる計画の安定性が必要なのだとAEAは言い、明確さを要請した。

 他方、欧州地域エアライン協会(ERA)、これは欧州内の地域航空会社の代表であるが、その事務局長であるSimon McNamara氏は、国際便の排出物を捕捉しようとすることは、たとえEU空域においてさえ、非EU国家とのかつての論争を再燃させることだろうと反対した。「しかし、同様に、EU内部のみ規制対象とする制度は欧州と欧州内エアラインにとって厄介な問題になるだろう。」と彼は述べた。

 「賢明な選択肢は、EU ETSの適用を全フライトに関して保留し、ICAOで2016年までに国際制度を作り出すことに集中することである。しかし、環境問題に関する欧州の理想主義がそうなることを阻止してきた。我々は2つの選択肢から1つを選ばなければならないように見えるが、どちらの選択肢も理想的なものではない。」

 旅客数では欧州で上位2位に入るRyanairやeasyJetのような低運賃航空会社を代表して、欧州低運賃エアライン協会(ELFAA)が2012年の遅い時期に『時計を止める』決定がされてから、航空関連のEU ETS指令を完全に復活させるよう陳情を行ってきた。

 完全施行を復活し損ねたので、EUは少なくとも欧州空域における排出物を対象とするETSの実施をすべきだと、ELFAAの事務局長のJohn Hanlon氏はPeter Liese氏、Gerben-Jan Gerbrandy氏やブリュッセルを本拠地とするNGOのTransport & Environmentと共に木曜日の記者会見で要求した。

 「ETSの基礎としての1年限定の『時計を止める』措置を延長することは差別を生むのみならず、長距離便を規制対象にしないまま、EUの航空排出物であるCO2の20%のみ規制対象とするようなもので、環境対策としても効果がない」と、彼は述べた。

 完全実施から暫定的に対象範囲を狭める場合、Hanlon氏によれば長距離便を優遇することになり、この制度の環境効率の基準の再評価をするようにと彼は要求した。「根本的に異なる範囲について設計された元来の基準を再検討しないと、欧州内の運航者についてさらに差別を助長させることになる。

 Hanlon氏は、ELFAAはEU ETSを初めから支持してきたこと、ELFAAの加盟エアラインは成長し続けることを望んでいるが、成長は環境上持続可能なことを示したくもあるので、新技術が排出物の増大を相殺できるまでは、市場に基づくメカニズムがそれ故必要となることについて述べた。

 「我々の分野は非常に成長が著しく、割当量が最も不足しているが、それに対処する気力はある。しかし、ETS制度は環境対策として公平で差別を生まず、効果がなければならない。そこで、EUは完全実施にこだわるべきだったと我々は考える。少なくとも今EUがすべきことは、欧州委員会提案にこだわることだ。」

 彼は欧州議会に対し、政治的圧力に負けないよう呼びかけた。「EU空域での規制をあきらめて欧州内規制に後退したら、次に対面する論点はICAO総会決議が双方の合意を必要とする、という点であり、EU ETS実施に反対する国家が引き続きEU内での規制対象にされることを喜んで受け入れるなどと考えないように。あなた方が目にするのはかつてないほどに縮小した制度であり、あなた方はEUの規制する権利とEUの品位を大きく揺るがす難問に直面することになるだろう。」

 欧州議会議員の間の歩み寄りの雰囲気を歓迎しつつ、DG CLIMAのBardram女史はENVIの会議の席上で、(加盟国を代表する)欧州連合理事会との共同決定プロセスを終えるための合意の期限が4月の終わりと、切迫したスケジュールであることに言及した。

 しかし、Liese氏とGerbrandy氏は記者会見で、ENVIは欧州委員会の提案に基づき、1年を超える延長に賛成票を入れることはありそうもないのに対し、TRANの報告者が委任されているのは「時計を止める」適用制限の2016年までの延長のみを基盤とする交渉であり、TRANとの合意に達するのは困難であるかもしれないと警告した。欧州議会と欧州連合理事会が4月終わりまでに合意に達することができなければ、自動的にEU ETS指令の完全実施に立ち戻ることになると、Liese氏はくぎを刺した。

 EU機関の間の三者会談は2月中に行われる予定で、その後、3月に(加盟国の)環境・運輸理事会の会議が行われ、4月14-17日の全体会議で欧州議会の投票が行われる予定である。


リンク:

ENVI委員会会議のビデオ

TRAN委員会会議のビデオ(航空関連のEU ETSは16:01:24に開始)

Liese氏/Gerbrandy氏/Hanlon氏/T&Eの記者会見ビデオ

海外情報紹介 航空の国際的MBM開発に関する新組織設立を目的としたBRIC国家による提案をICAO理事会が承認

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1804

 2013年12月20日金曜日−BRIC国家(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、ICAO総会において市場に基づく対策(MBMs)に関し発展途上国から広い支持をとりつけることに成功したのに続き、国際的MBMの開発を主導する組織をICAOが設立するという彼等の共同提案は、ICAOを運営するICAO理事会によっておおむね承認された。環境諮問委員会(EAG)というこの新組織は、報告を直接ICAO理事会に対して行い、MBM問題に関わったこれまでの組織より広い範囲の代表を集めることになる。EAGへ付託される条項と役割はこれから策定され次回理事会会議で提示されることになろう。
 EAGが承認されたことは欧州や米国などの先進国から発展途上世界への力の移行を表し、国際的MBMのこれから3年間の開発におけるICAOの作業を大いに際立たせるだろう。提案が行われたのは、MBMの開発の過程において大半が発展途上国であるICAO加盟国の余すことなき参加を確実にするためである。

 炭素排出軽減の責任は先進国世界が負うという、共通だが差別化された義務(CBDR)という国連気候変動枠組み条約の原則は、BRIC提案によれば、いかなる国際方式にも取り入れられることになる。BRICの圧力によってICAO総会の気候変動決議(A38-18)に採用されたCBDRの表現は、結果として欧州や米国や他の先進国からの正式な抗議を受けることになった。

 MBMsに関しては、2006年からICAO理事会とICAO総会内においては二極化した論争以外のものをほとんど生み出してこなかったとEAGの提案者は趣意の中で記した。

 「そのような状況の中、今こそA38-18に沿った国際的MBMsの開発に向けて、1歩を踏み出す時である。」と彼等は意見し、審議過程と方法の変更が必要だと付け加えた。「その政治的性質を鑑みるに、この問題が引き続き同じやり方で、すなわち事務局が主導するようなやり方で処理されるのは好ましくない。」

 彼等の提案によれば、新組織は地理的公平性に配慮するため理事会メンバーで構成されねばならない。他の理事会メンバーや理事会メンバーでない代表者もまた組織に参加でき、産業界、NGOや他の組織からのオブザーバーも招かれる。全加盟国の利益が反映されるように、直接ICAO加盟国と諮るようなメカニズムを提案者は推奨している。「というのも、第39回総会でことをうまく運ぶには全加盟国を巻き込むことが不可欠だからである。」

 国際的MBM開発に伴う技術的問題での作業が見込まれる、ICAOの環境保護委員会すなわちCAEPは、この提案の下で、通常の場合のように直接理事会に対して報告を行うのではなく、EAGに対して報告を行うことになる。

 BRIC提案は、EAGが執り行う数多くの任務を列挙している。

 •世界的に導入か可能かどうかや予測される実施継続期間もだが、起こりうるその環境影響や経済影響も含めて国際的MBMの採用可能な選択肢の選定条件1式を作成すること;

 • 技術的側面や、先進国及び発展途上国への環境影響及び経済影響を含め、選択肢の実現性と実用性を調査すること;

 •同じ目的を同様に達成しうる、税金や、燃料か炭素に付加する料金のような他の選択肢を調査すること;

 • 発展途上国への支援を可能にするために、CBDRや、特殊状況と個々の能力(SCRC)の概念を国際的MBM制度に取り込む;

 • 主要な論点や課題をあぶり出して適切な対処法を提案するための加盟国との協議プロセスを開始するため、選出結果を理事会に報告する;

 •実行可能なMBMとそれの世界的導入や基本条件の評価を含める、理事会への最終報告準備のために、肯定的な結果である場合は加盟国からの回答を精査する;

 この提案の論争を呼ぶ側面として、欧州に宛てたと見られる「この組織の作業が上首尾の結果を出せるような」条件の設定がある。BRICによれば、全加盟国は「実質ともに」ICAO決議A38-18に従うことになり、国際的MBMが施行されるまで、同意無しにはいかなる国(々)をもその国家的或いは地域的MBM制度の対象とせず、そして実施されている現在のすべてのMBMs或いは炭素税制度の役割を国際的MBMが施行される前に終わらせることを請け合うことになるだろう。

 ICAO理事会は理事長に対し、事務局長の支援を得て、EAG設立に関し次回理事会会議で報告書を提出するよう要請した。同じ会議においてA38-18決議の幅広い実施のための行動計画も提示される予定である。

 環境に関する論点についてはこれからは航空輸送委員会では検討せず、代わりに直接ICAO理事会に諮ることが決められた。

海外情報紹介 国際便をEU ETSで一方的に規制するというEUの提案は国際的な制度を危険にさらすと「衝撃を受けた」IATAが言明

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1803

 2013年12月20日金曜日−国際社会に諮ることなく国際航空をEU ETSの規制対象として取り扱うという欧州委員会による提案は、貿易戦争の脅威を再燃させることになりかねず、市場に基づく国際的気候対策制度開発のための共同作業に集中しようとする加盟国を戸惑わせることになりかねない、とIATAはコメントしている。「ICAO加盟国が市場に基づく対策(MBM)開発のための歴史的合意を10月に行い、一方的に国家的或いは地域的制度の対象にすることを否定した後に、欧州が間違った方向へ舞い戻りつつあるというニュースが聞こえてきたので不信と衝撃が呼び起こされた。」と事務局長のTony Tyler氏がIATA国際メディアデイに報道記者に語った。
 「私にとって、気候変動に関するICAO総会の結果は航空と地球のための大きな前進だった。」とTyler氏は語った。

 EU/EEA空域内の全便の排出物をEU ETSの規制対象にするという欧州委員会の提案は、すでに政治的緊張をもたらしていると彼は語った。「この提案のせいで、航空のための市場に基づく対策について、国際的な合意を見つけるという大きな目標達成のための重要な作業から政府が気をそらすことがないようにと我々は願っている。」

 IATAの会員と対外関係担当の上級副総裁であるPaul Steele氏は、国家或いは国家の集団は、その独自の空域内における第三国からのエアラインの飛行を、その第三国の合意無しで規制可能であるという、EUの推進した提案は37対97の票決で明確にICAO総会で否決されたのだ、と述べた。

 彼はまた、欧州委員会の提案が、EU空域に入っている飛行部分をいかに正確に計算するのかなどという、多くの法的問題や運航上の問題もまた提起したと述べた。「しかし、我々の心配するのはそのレベルをはるかに超えて政治的レベルにまで及ぶ。」と彼は付け加えた。「業界としては確実に避けたいと思うような状況である、貿易戦争の瀬戸際まで我々を引き戻すことになる。」

 EU ETSを欧州域内の便のみに適用するという「時計を止める(STC)」やり方の方がむしろ好ましいとして、EU加盟国が欧州委員会のやり方に疑問を呈するような兆しもみえていると、Steel氏は言及した。これは、彼に言わせると、ICAOに国際的MBMのための作業推進のための作業の余地を与えるだろうとのことだ。

 今週の欧州議会の環境委員会(ENVI)会議の席上で、航空に関するEU ETS指令の報告者である Peter Liese博士は、欧州域内を規制するやり方では競争上の不利が生じ、競争の歪みをもたらすとして、この問題では欧州のエアライン産業ではしかし、意見が分かれていると主張した。

 欧州議会でもまた意見が分かれていると彼は述べ、欧州委員会の提案は野心的に過ぎるとして、時計を止める状態(STC)を継続するのを好む者と、提案は十分には意欲的でなく、欧州指令の本来の規制範囲に戻すのを好む者がいるとのことだった。空域方式は2つの立場のうまい妥協案であると彼は主張した。彼が望む提案の修正は、2016年のICAO総会後に法律を見直し、排出枠取り引きの収入は技術開発と気候に関する国際的な財源へ割り当てるというものだった。

 Liese氏は、とりあえず米国は空域方式には文句がないだろうと主張した。なぜなら一国の空域の主権問題は米国にとって「神聖」なものだからだ。

 「EU法は適用されねばならず、我々は脅しに屈することはできない。我々は降伏すべきではないし、第三国の主張に屈するべきではない。」と彼は述べ、EU加盟国はEU法を実施する義務があると付け加えた。

 Liese氏による欧州委員会提案の支持と彼の修正案は、航空に関わるEU ETS指令に関して彼の影の報告者でありENVI委員会の議長であるMatthias Groote氏が支持した。

 ENVIの欧州議会議員である Martin Callanan氏は意見が異なり、ICAOでの国際的取り決めは優先されねばならず、EU加盟国が扱いに苦慮してきた第三国数カ国がEU法を順守しないという深刻な懸念があり、第三国をEU ETSの規制対象にすると最終的にEUの再度の退却につながり、恥をかくことになりかねないと発言した。EU加盟国は決して排出枠取り引きの収入の使途をあらかじめ定めることには同意しないだろうと彼は述べた。ENVIのメンバーであるChris Davies 氏もまた、空域方式の提案には不安があり、EUには外部からの圧力で再び砕け散っているひまはないと述べた。

 「我々は法的には正しいかもしれない。」と欧州議会議員でありSTCの継続を好ましく思うHolger Krahmer氏は言った。「しかし、実施不可能な法律にたどり着く可能性がある。ICAOでは国際的な取り決めで合意することを望まない加盟国があることは隠すまでもないが、EUの頑迷さがこれら敵対者につけこまれることになる。」

 欧州議会の産業委員会(ITRE)における航空関連EU ETSの報告者であるEija-Riitta Korhola女史は、欧州委員会の提案には反対で、2016年までSTCを継続することを支持すると述べた。

 Elina Bardram女史は、2012年においては対象となる全排出物の98%が航空関連EU ETSを健全に順守していると欧州委員会のために報告した。彼女は空域方式は推進するにはよいやり方で、法的にも技術的にも堅実であると述べた。

 ENVI委員会での提案と修正の票決は1月23日に行われる予定で、欧州議会全体での投票は4月に行われる予定である。それまでは、欧州委員会と加盟国を代表する欧州連合理事会の共同決定プロセスが継続する。

 欧州の環境NGOの一団が昨日、英国、フランス及びドイツ政府の指導者達に書状を送り、 Liese氏への支持と、STC継続を良しとして空域方式を拒否しようとする3カ国の提案の取り下げを訴えた。

 「そうすることにより、シカゴ条約によってもたらされた国権や義務を保持しつつETSを修正して欧州はICAOを尊重していることを裏付けることになるだろう。」とブリュッセルを本拠地とするTransport & Environmentの広報担当者が言った。「さらに重要なことに、欧州域内の空域で排出物を規制することをEUに要求することで、速やかで効果的な行動が火急に必要であると公式に表明することになり、欧州が規制を行う権利を追認し、航空会社を公平に扱うというICAOの原則を強固にすることになるだろう。」

 「我々はまた、2012年の法律を順守しそこなったエアラインに対して適切な執行手順がとられるよう彼等の政府が保証することと、この対応がなされることを彼等の政府が我々に追認することを要求する。2012年の法定義務の効果的な執行がなされなければ、欧州内及び欧州外の航空会社が将来の法律を順守することは見込めない。」

リンク:

IATA−国際メディアデイにおけるTony Tyler氏の発言

IATA−Paul Steele氏による発表:「ICAOの成果を足場とする

欧州議会のENVI会議(航空関連EU ETSの討論は10:25:40に開始)

NGOsから英国、フランスそしてドイツ政府の指導者らへの書簡

海外情報紹介 EU ETSを修正して第三国を規制対象にしようとするEUの計画に対し、米国の国会議員が中国と共に反対し、英国が動揺

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1794

 2013年12月2日月曜日−欧州議会議員が欧州域内排出量取引制度(EU ETS)の規制範囲を修正しようとする提案について作業をする一方で、米国の下院議員は米国の運輸長官であるAnthony Foxx氏に対し、EU ETSへの米国の民間航空機の参加を禁じる権限を行使するよう要求している。運輸委員会の超党派の代表らは、EU制度の適用は最近のICAO合意に違反すると主張し、米国の運航者が「EUの制度の一方的な適用によって損害を与えられないよう」保証するようにEUと交渉するようFoxx氏に要請している。中国も欧州委員会の提案に不快を表しており、気候変動に取り組むに当たっての国際的結束に害を及ぼし、UNFCCCの共通だが異なる責任の原則が、市場に基づく国際的対策の設計と実施を裏付けなければならないと主張した。その一方で、第三国を離発着するフライトを規制対象とするという欧州委員会の提案に反対の立場であることを示唆したのは英国もであった。  米国下院の運輸・インフラ委員会と航空分科委員会の主要メンバーからの書簡には、提案されたETSへのEUの修正は「EUを離発着する米国便の欧州空域にかかる部分に一方的な適用がされることから、ICAO合意の精神と字義を冒涜している。」と書かれている。

 議員に言わせると、修正はICAOが開発し合意の得られた枠組みを『侮辱』しているそうだ。「ICAOでの国際的合意を通して航空排出物に取り組みたいと主張するにもかかわらず、見たところではEUは単にICAO合意の望ましい部分にのみ従いたいようだ。」

 そのために、彼等は、2012年遅くに立法化されたETS禁止法に規定されるように、Foxx氏に速やかに交渉を行うよう要請し、もしEUの修正がそれでも通過するようなら、公衆の利益に適うと判定されれば、ETSに米国航空機の運航者が参加するのを禁じるよう要請している。

 「この判定を行うにあたっては、運輸長官は米国の消費者、航空会社や運航者への影響;米国の経済、エネルギー、及び環境安全保障への影響;そして現在の国際公約を含めた米国の外交関係への影響を考慮することになっている。」と書簡には書かれている。

 彼等によれば、「国の法律なのだから、それゆえ、運輸長官が公共の利益のために行動し、法の下で運輸長官に許される権限を最大限行使するよう、我々は要請する。航空排出物を取り扱う世界的取り組みの開発について、ICAOは合意の得られた工程を表明し、ICAOがこの目標を達成するにふさわしい場であることは変わらない。」

 米国運輸省の上級職員は、先週のロンドンでの「航空輸送の将来会議」で、欧州委員会の提案は「必要のない混乱」であると話した。

 ワルシャワでの最近のUNFCCC COP19へ割り込んで、中国が表明したのは、国際レベルでは二国間或いは多国間協議によって合意がなされなければならないと決定されたにもかかわらず、「ある地域と国家群がいまだ国際航空と海運輸送に一方的な対策を適用しようと決定、或いは企てている。」というものだった。EUの空域提案を特に名指しすることなく、中国の声明は以下のように続く。:「これらの行動は必然的に気候変動に取り組むための国際的活動の結束と連帯に悪影響を及ぼすことになり、UNFCCCと京都議定書にとって悪い先例となり、(航空と海運という、)これら2つの領域の地球に優しい発展の妨げとなるだろう。」

 ICAOとIMOによる、UNFCCCの科学技術助言機関(SBSTA)への年間報告の発表に続いて中国の割り込み声明が行われた。ICAO報告の焦点は最近の総会における気候変動決議の成果だった(A38-18)。

 「ICAO第38回総会において、CBDRと双方の合意の原則が、国際民間航空による排出物に関して市場に基づく対策を設計及び実施する場合の土台となるという、ICAOが採用した決議を中国は歓迎する。」と中国代表が述べた。「我々はまた、第65回MEPC総会で採択されたIMO決議を歓迎する。この決議は『UNFCCCとその京都議定書に奉られた、CBDRの原則を含めた諸原則』を認めている。2つの国際機関の加盟国による、協定の原則を再確認するための努力と建設的な態度を反映する、これらは主要な道標である。UNFCCC内部の活動であれ外部の活動であれ、世界規模の気候変動に取り組む活動が統合されて一貫性のあるものへと移行してきたと言及できるのは喜ばしい。」

 「そこで、温室効果ガス低減制度の構築にあたっては各国がこれらの諸原則を一層実地に移すこと、そして先進国と発展途上国との違いを認識することを、中国はICAOとIMOの加盟国に強く勧奨する。我々はまた、前述の地域及び国家群が多国間の交渉及び協議の場に戻って、気候変動に取り組むための主要な枠組みであるUNFCCCの優位性に十分な敬意を払い、国際航空輸送と国際海上輸送の持続可能な発展を損なうような行いは慎むよう要求する。」

 ICAO総会決議にCBDR原則が含まれることは特筆すべきだが、その後、欧州の諸国家や米国を含めた先進国から提出された留保によって拒否された(記事を参照のこと。)。

 David Cameron首相が率いる、かつてない規模の英国貿易使節団が中国へ出発するため、英国もまた欧州委員会の空域提案に反対の立場であることを示唆し、少なくとも2016年までは2013年に採用した『時計を止める』扱いを延長することを望んでいる。というのも、国際的な反対や起こりうる報復に直面することを英国は望まないからだ。

 「航空に関するEU ETSの現在の交渉に関して英国の目標は、航空排出物に関する市場に基づく国際対策について2016年での合意を促すことを期待して、高水準で順守を達成し、国際的な報復の危険性を避けるような範囲で、加盟国が次の4月までに欧州議会との合意を達成することである。」と英国のエネルギー・気候変動省(DECC)の広報担当者がGreenAir誌に語った。

 「欧州経済地域内のフライトをEU ETSの規制対象にする(すなわち、2013年の欧州委員会提案の延長)という範囲が、この目的達成のためには最良の策かと我々は現在考えている。」

 「明確な時間的制約にもかかわらず、交渉はいまだ比較的初期の段階にあり、我々はこの件について他の加盟国及び欧州議会議員らと、これから何日、何週もの間、許容可能な妥協点を探すという目的で話し合うことになるだろう。」

 これまでのところ公式なコメントは無いが、フランスとドイツは英国の立場を支持すると見られている。3カ国はエアバス社の主要な出資国であり、エアバス社の航空機購入を保留するという中国の脅しに遭い、欧州委員会に圧力をかけて2012年にEU ETSの完全施行を止めさせたと言われており、その結果、2013年のICAO総会の結果が出るまで1年間の『時計を止める(STC)』適用制限を行うこととなった。

 STCの下では、EEA内のフライトからの排出物のみがEU ETSの規制対象となる。中国とインドのエアラインがEEA内で飛行を行うと見られるが、2カ国はEU ETS指令を順守しようとする態度をこれまでのところ見せていない。先週、航空関連のEU ETSに関する欧州議会の報告責任者のPeter Liese氏は、中国やインドのような第三国が欧州連合内で運航する場合にSTC規制に従うことさえ拒否することは、彼と欧州議会にとって許し難いことだと述べた。

 欧州連合理事会と欧州議会が代表する、EU加盟国内の対立は現在まだその全容を表していない。立法化のための時間はすでにかなり限られており、航空輸送産業や他の利害関係者と新たな協議を行い、欧州委員会の新しい提案は正式なものにしなければならない。欧州のエアラインとNGOsは、たとえ2016年までの延長としてもSTCの継続には満足しそうもない。何千何万というビジネスジェットの運航者は、いわゆる「小規模排出者」として現在はSTCの下で規制対象になっているが、今度の欧州委員会提案の下ではEU ETSの規制対象外となる予定であり、これについても決定がされねばならないだろう。新しい法律が4月までに施行されない場合には、EEA空港を離発着する全フライトを規制対象とするEU ETS指令の完全施行に自動的に戻ることになる。

 幾らかの修正がなされるなら、第三国を離発着するフライトの排出物も含めた、EEA空域内の排出物に、EU ETSの規制対象を制限するという欧州委員会の提案をLiese氏は概して支持している(記事を参照のこと)。

 彼曰く、STCが欧州のエアラインと空港の競合状態に悪影響を及ぼしているとうことであり、以下を付け加えた。:「単純に『時計を止める』のを延長したのでは、欧州連合の無条件降伏ととられかねない。国際レベルでの進展があるなら、主に欧州連合による圧力を通じてであり、我々は自らの誓約にこだわる必要がある。」

リンク:

米国運輸長官宛ての米国下院運輸委員会の書簡

SBSTA39へのICAOとIMOの報告

SBSTA39での中国によるICAOとIMOへの割り込み発言

海外情報紹介 Airways New Zealandが、ASPIRE計画下で環境に優しい新規のアジア・太平洋ルートを7ルート開発

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1805

 2014年1月6日月曜日−7本の「環境に優しい航空路」が、ASPIRE(Asia and South Pacific Initiative to Reduce Emissions・排出物低減のためのアジアと南太平洋の取り組み)計画の下で、ニュージーランドとアメリカ合衆国やシンガポールの空港との間に導入された。ASPIRE-Daily City Pairsは環境影響低減のための最良の実践手順を使用しているとIATAが認証した毎日の飛行ルートである。航空ナビゲーションプロバイダー(ANSP)であるAirways New Zealandが開発した新規ルートは、オークランド−シンガポール往復;クライストチャーチ−シンガポール往復;ロサンジェルス−オークランド往復;そしてサンフランシスコ−オークランドである。ANSPは現在、南太平洋の航空交通による環境影響を減らす目的でAirports FijiのASPIREへの参加を支援しているところである。
 ASPIREの他の協力機関としてはAirservices Australia、米国連邦航空局、日本の航空局、シンガポール民間航空局(CAAS)そしてAeroThaiがある。

 追加された2都市間ルートはAirways New ZealandとそのASPIRE協力機関である米国連邦航空局、Airservices AustraliaとCAASが、ニュージーランド航空及びシンガポール航空と共に何ヶ月もの間開発作業に携わった結果であった、とAirwaysのCEOであるEd Sims氏が報告した。

 「航空会社である我々の協力者は、これらの新しい『環境に優しい』ルート開発に重要な役割を果たした。」とSims氏は言った。「ルート上の、ゲートからゲートまでの、航空交通管制に関して、排出物を減らして燃料節約を可能にする、環境に最良の実践を彼等に供給できたことを我々は誇らしく思う。」

 AirwaysにはIATAの検証以前にASPIRE-Daily City Pairとしてオークランド−サンフランシスコルートがあり、2008年の早い時期に計画が開始されてから合わせると全部で8ルートになる。2011年2月にオークランド−サンフランシスコのASPIRE-Daily City Pairが開始される前に、ニュージランド、オーストラリアそして米国をつなぐ一連のデモフライトが、広範囲のデータ収集と性能モデリング実施の目的で行われた(記事を参照のこと)。

 IATAは、都市の各組み合わせに対して三つ星から五つ星のランク付けを行い、そのルートによる環境保全上の利点のレベルを示した。新規の7つの2都市間ルートのうちの5つが四つ星レベルで、シンガポールルート2つが現在三つ星レベルを達成している。

 AirwaysはASPIREの年次会合を4月に、ニュージーランドのクイーンズタウンで主催することになっている。


リンク:
Airways New Zealand
ASPIRE

海外情報紹介 欧州議会の報告責任者は航空関連EU ETSを修正するなら排出量上限を厳しくして無料割当枠を減らすことを提案

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1793

 2013年11月28日木曜日−航空を欧州域内排出量取引制度(EU ETS)の規制対象にすることに関する欧州議会の報告責任者であるPeter Liese氏は、航空分野は同じ制度の他の産業と横並びにしなければならない、現在の上限より多く排出量を減らさねばならない、また、割当量の排出枠取引のレベルを高くしなければならないと述べている。航空排出物の規制範囲を元来の範囲から欧州の空域範囲へと狭めるという、欧州委員会の提案を彼は支持しているとはいえ、上限を厳しくすることで環境保全は部分的には保たれると彼は主張している。Liese氏はまた、次回ICAO総会で世界規模の炭素制度の進展をEUが再調査すべきであるため、空域方式を適用するのは2016年終わりまでであることを確実にするために、欧州委員会の提案に変更を望んでいる。彼はまた、排出枠取り引きの収入は世界規模の気候に関する財源と、航空排出物低減技術の研究開発投資に割り当てることを要求している。
 欧州議会を通じて新規の法律制定の舵取りをしているLiese氏は、欧州委員会の空域提案の根幹部分は支持すると述べた。ある者は完全実施への回帰を望み、他の者は1年間の「時計を止める」という適用制限を2016年まで或いはさらに2020年まで継続することを主張しており、欧州委員会提案の根幹部分は、欧州低運賃エアラインやいくつかのNGOそして多くの欧州議会議員を含めた利害関係者多数の意見の間の妥協案であると彼は述べた。

 「対象になるのが欧州内のフライトのみでなく、欧州でない国家へのフライトも、欧州空域内の飛行部分のみとはいえ対象になるので、このやり方は現在の『時計を止める』解決策よりずっとよい。」Liese氏の声明はこういう内容だった。「しかし、これは重要な点である。パリ或いはロンドンからイスタンブールの新ハブ空港へのフライトはほぼ完全に対象となるだろう。『時計を止めている』間は、これはまったく対象にならない。『時計を止めている』間は対象にならないアラブ首長国連邦のハブ空港へのフライトについても同様で、欧州委員会の提案によって部分的には少なくとも規制対象になるだろう。」

 Liese氏は、第三国を離発着するフライトはこの制度の適用対象から外せないと強く主張した。「2016年まで『時計を止める』のは私や多くの他の欧州議会議員の選択肢ではない。」と彼は述べた。「欧州内で離発着するフライトを、その欧州空域内部分についてすべて規制対象とすることは必要不可欠である。これは欧州のエアラインとその競合状態において公平を期すためと環境保護のためである。」

 Liese氏は『時計を止める』ことを延長すれば世界規模の制度設立に関する国際交渉において欧州連合による『無条件降伏』ととられかねない、と述べた。

 欧州委員会の提案は2020年までのEU ETS指令のさらなる修正を見越してはいないが、彼の公式な提案を欧州議会議員各位によって検討してもらうために、説明のための声明において、Liese氏は、欧州指令の修正が正当化されるのは世界規模の航空排出物に関して法的拘束力のある合意が見込まれるのが2016年のICAO総会だからであると述べた。「これが現実的選択肢であれば、指令の修正が保証されることはまずない。」と彼は述べた。「それが、2016年まで空域方式で規制し、2017年からのETSの完全実施の再導入が妥当である理由である。2016年にICAOで国際合意が現実に承認された場合はもちろん、欧州連合はそれに従って法律を修正するにやぶさかではないはずだ。」

 とはいえ、2016年にICAOで合意に達するという確信がLiese氏には無いようだ。「〔最近のICAO総会において〕モントリオールの10月からの取り決めはもはや、ワルシャワでのUNFCCC COPでなされた取り決めほど的確でも意欲的でもない。」と彼は述べた。国際航空に関する、市場に基づく国際対策開発のためのICAO総会決議は、重要な一歩ではあったが、多くの条件や前提条件がついてしまったと彼は付け加えた。

 「2016年に国際合意がなされなければ、それ以降は我々の制度を完全実施する準備をする必要がある。これはつまり、大陸間飛行も規制対象とすることを意味するだろう。」

 一般的な産業の平均競売率が40%なのに15%というレベルであり、他の産業が2020年までに21%排出物を低減しなければならないのに多くて5%という、航空領域を優遇することは、2007/2008年に欧州指令を立法化する過程で欧州議会からの批判の的になっていた、と彼は述べた。

 空域方式はEU ETSの元来の規制対象のわずか40%にまで、対象排出物を減らしてしまうと彼は述べた。「環境への悪影響を制限するため、競売のレベルを引き上げることは正当化され、少なくとも他の産業がすでに2013年の始めから順守しているレベルまでは排出物を減らす必要性がある。」

 もう一つの修正として、Liese氏は競売の収入は、EU ETSの管理費用をまかないつつ、UNFCCCの環境のための気候基金に寄与しながら、EU及び第三国における気候変動軽減と順応の財源、低排出物輸送のための財源に割り当てることを提唱している。このことがEU ETSの国際レベルでの信用を打ち立てることになろうと彼は述べた。

 そのような約束には、元来の欧州指令を通過させる時に欧州議会によって異論が出たとLiese氏は述べた。「その時点では、加盟国はこれを受け入れる準備ができていなかったので、欧州指令に入っているのは勧告のみである。加盟国がもっと明快な約束を受容していたら、EU制度の承認は楽だっただろう。」

 法律の修正が4月終わりまでに通過しない場合には、元来の形での欧州指令が復帰するので、Liese氏は、欧州議会と欧州連合理事会の共同決定プロセスを速やかに進めることの必要性を強調している。この問題に関する環境委員会の投票は1月30日に行われ、欧州委員会と欧州連合理事会との3者会談後の4月の全体会議で最終投票が行われることになるだろうと、彼は言った。

 2013年12月16日に環境委員会が報告書案を検討する予定で、輸送委員会は欧州委員会の提案に関する独自の報告書案をほぼ同じ日程で検討の予定である。加盟国28カ国の環境大臣が2013年12月13日の会合でこの問題を話し合う予定になっている。


リンク:
Peter Liese氏の声明

海外情報紹介 国際航空のための〈非現実的〉なカーボンニュートラル目標と市場に基づく対策を再考するようロシアがICAOに要請

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1786

 2013年11月18日月曜日−最近開催されたICAO総会で市場に基づく国家的な対策や地域的な対策(MBMs)の役割を希薄化するため、主要な新興国家と共に主導的役割を果たしたロシア連邦は、2020年からの国際航空のカーボンニュートラル目標は非現実的だとコメントしている。そのような目標はMBMsの必要性をあらかじめ決定づけているが、MBMsは、ロシアに言わせると、国際航空領域の温室効果ガス排出を現実的に低減する可能性を減少させ、技術発展の速度は速くはないので、飛行の安全にも悪影響を及ぼしかねないとのことだ。排出物低減を現実に達成するには、ICAO理事会がICAO総会の気候変動決議で設定した目標を「再考」するようにと、ロシア連邦は要請している。カーボンニュートラル目標(CNG2020)はまた、欧州からは熱心さに欠けると批判され、ロシア以外のBRIC国家からは異議が出されている。
 ICAO総会決議(現在の正式呼称はA38-18である。)の要素について、計61カ国から留保或いは抗議が提出され、現在ICAOウェブサイトに掲載されている。それを見ると、先進国と発展途上国の間に明確な境界線があることがわかる。

 ICAO総会決議の中でCNG2020目標を扱うパラグラフ7に抗議しているブラジル、ロシア、インド及び中国のBRIC国家に同調するのはアルゼンチン、キューバ、ベネズエラ、バーレーン及びサウジアラビアである。

 「努力目標とカーボンニュートラルな成長に関し、我々は懸念を抱いている。これらの懸念は他の国家も同意見である。」とサウジアラビアは述べている。「我々が欲するのはこれらの懸念を一掃するICAO決議である。負担となる費用影響無しに、我々の経済的及び社会的利益に合った我々の民間航空領域の開発を行う権利を支持する。」

 留保の陳述の中で、中国は努力目標については問題無いが、ただ、低減対策は主導すべき先進国に責任があると述べている。

 「中国代表団の意見は、発展途上国の国際航空はいまだ発達の段階にあり、異なる責任無しに2020年からのカーボンニュートラルな成長目標を採用するのでは、発展途上国の国際航空のこれからの発展を妨げることになるだろう。」と中国は述べている(記事を参照のこと。)。

 MBMsの考案と実施にあたり、ICAO総会決議に添付された指針のリストの中に共通だが異なる責任(CBDR)というUNFCCC原則の文章を入れて承認することで発展途上世界の懸念を取り扱う試みは、今度は、先進国の反対に遭っている。

 オーストラリアは留保文書の中で、CBDRが、差別無く、公平で、等しい取扱いという従来のICAO原則を弱体化させ、混乱を招く結果、及び/または、差別的な結果に結びつく可能性について述べている。「ICAOは特殊事情と責任能力(SCRC)に配慮して、あまり進歩していない国家や運航者について必要ならばこれまでにあらゆる特別配慮が可能であった。」とオーストラリアは付け加えている。

 CBDR原則は国際民間航空活動を管理する原則と相容れないとカナダは述べた。独自の地域的MBM制度であるEU ETSを引き合いに出して、欧州の44カ国はCBDRは国毎の活動に適用されると述べた。国籍によって運航者の間に扱いの違いがあったなら、市場の歪みと差別は運航者の間に存在することになるだろう、と欧州は主張し、付け加えた。:「発展途上の国家を本拠とする多くの航空会社は、実際には世界の中でも最も巨大で最も進歩し最も利益を上げる航空会社に属する。」

 国際的対策が実施される以前の国家的及び地域的MBM制度を取り扱う、ICAO決議のパラグラフ16に懸念を抱いているシンガポールは、対策は同程度に、公平にそして差別無しに、関連する全航空運航者に適用されるべきだとコメントした。パラグラフ7は別として、このパラグラフは主に、国際交通の市場占有率が1%に満たない発展途上国を離発着するルートをde minimisで適用除外とすることに関して最も多くの異議を引き寄せた(パラグラフ16b)。このパラグラフが市場の歪みを引き起こす可能性を指摘するのは先進国のみならずカタール、アラブ首長国連邦そして興味深いことにアフガニスタンもである。

 欧州空港を離発着するフライトの欧州空域内の排出物を一方的にEU ETSの規制対象とすることにICAO総会決議がゴーサインを出すものと見込んで、欧州はICAO総会に参加した。ロシア及び発展途上のその連邦構成国家群はその規制範囲に影響される第三国の合意を得られたときのみMBMsが実施されるように文章を変更させることに成功した(パラグラフ16a)。

 当然、欧州諸国はこのパラグラフに留保を提出し、加盟国が自国の法と規制を全加盟国の航空機に対し差別無く適用する権利をシカゴ条約が認めており、ICAO総会決議はこの権利を縮小しなかったと述べた。

 欧州はまた、2020年までのICAOの年間2%の燃料効率改善目標を以てしても世界の航空排出物は2005年のレベルよりほぼ70%増加することが見込まれているため、CNG2020の努力目標を中途半端に野心的であると表現した。2005年レベルと比較した、2020年までの10%の世界規模の低減を目標として常に推奨してきた欧州の立場に変化は無いとのことだ。

 2週間前、環境保護と気候変動に関する2つの決議(A38-17とA38-18)に続くこれからの3年間の作業について検討する目的で、ICAOの環境保護委員会であるCAEP総会から第一回目の会議に46カ国の代表がドバイに集合した。

 ICAO総会後の第1回目ICAO理事会会議は今週始まり、国際的MBMに関わる将来の作業計画についての討議もまた行われることが見込まれている。

リンク:
ICAO第38回総会決議とA38-18の留保一覧

A38-18決議内のパラグラフに対する加盟国から提出された留保一覧
* ブラジルはアルゼンチン、キューバ及びベネズエラと共同で提出
** EU/ECAC加盟国42カ国の代表として
*** オーストラリアもまた、序文のパラグラフ10とパラグラフ6,7,20と21のSCRC或いはCBDRの解釈を容認しない。

パラグラフ7:
2020年からのカーボンニュートラルな成長の世界規模の努力目標
パラグラフ16(a):
国家的/地域的MBMsに関する双方の合意
パラグラフ16(b):
発展途上国に就航する航空路に関して1% RTK(有償トンキロ)のde minimis

附属書の原則(p):
MBMsのCBDR/SCRC/差別無しへの配慮義務

海外情報紹介 合意には遠いのか、そう遠くはないのか−欧州委員会による国際航空に関するEU ETS提案は懸念されている。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1770

 2013年10月18日金曜日−欧州空港から離発着する大陸間便による欧州空域内の航空排出物を2014年からEU ETSの対象とするという欧州委員会の提案が今週公表され、多くの関係者を驚かせた。今月初めの第38回ICAO総会で、第三国を市場に基づく国家的炭素取引制度やEU ETSのような地域的炭素取引制度の対象にするには事前に合意が必要であるとする制限を課すことにICAO加盟国は成功した。にもかかわらず、欧州委員会はその主権が及ぶ空域を規制するEUの権利を強く主張し、エアラインの業界団体は国際制度での合意を目指したICAOでのようやく手にした進展をEU提案が弱体化させる可能性を懸念して反応した。EU ETSが本来目指した環境有効性を大幅に減じるような空域の提案には至らないと信じる者もいる。
 世界のエアライン240社の代表である国際航空運送協会(IATA)は、水曜日に公表された欧州委員会の提案について「懸念と驚き」を表した(記事を参照のこと)。

 「2020年からの航空のカーボンニュートラルな成長という約束(CNG2020)を果たすための成功への鍵となる予定の、市場に基づく国際的対策(MBM)開発のための歴史的合意を得て、第38回ICAO総会は幕を閉じた。そのため我々は、欧州委員会が現在提言している一連の活動が、ここに至らせるまでの良識を無意味にする可能性があることを心配している。」とIATAの事務局長であるTony Tyler氏は語った。「欧州委員会の提案が欧州議会と欧州連合理事会との共同決定段階に移行するにあたり、国際社会を含めて広く利害関係者を巻き込んだ検討がなされるものと我々は信じている。」

 「ICAOを通じて国際的MBMを目指す過程で合意に至るように我々は皆懸命に作業してきた。欧州を含めた全員がCNG2020の全体像に集中し続けることを確保することは決定的な重要性を持つ。」

 欧州外部のエアライン業界団体からの代表者もまた、欧州委員会の意図に深い留保を表明した。

 「我々はこの展開を懸念し、傍観している。」とアジア・太平洋エアライン協会(AAPA)の事務局長であるAndrew Herdman氏は語った。「個々の政府の承認無しに国際エアラインを規制対象にすることは特に主要な発展途上国からの強い反対に会う可能性がある。このことはICAO総会でたどり着いた本質と精神に背く行為である。」

 「2020年までに国際的MBMを開発することで合意に達し、得られた良い進展を台無しにすることは我々には受け入れがたい。2020年までの国際的MBMの開発にこそ、我々の努力を結集すべきである。」

 欧州委員会の声明以前のブリュッセルでのスピーチで先週、アラブ航空会社機構(AACO)の事務局長である。Abdul Wahab Teffaha氏は、EUが非ヨーロッパ系の航空会社の二酸化炭素排出量を再び捕捉することを決定した場合に貿易戦争が起こる可能性を警告した。

 欧州委員会はその提案への米国政府の反応を綿密に観察するだろう。空域方式は元来、ICAO総会後に欧州がその二酸化炭素管理制度を継続するにあたって推進するにふさわしい方法として、米国がICAOに提出したものであり、ロシア、インドそして中国のような発展途上国による、「双方の合意」条項をICAO決議に取り入れるという提案に対してEU代表団の加勢をすることとなった。アメリカ連邦議会を通過することで、EU制度に参加することを米国エアラインに禁じる法の効力がたとえ発生しても、EUは米国によるEU ETSの空域方式の提案について米国が引き続き支持することを期待するだろう

 修正版EU ETS制度の規制対象となることに立ち向かう米国の主要エアラインを代表する、米国エアライン協会(A4A)は当然欧州委員会の計画に反対している。

 「2週間前にICAOで合意が達成されたという状況にもかかわらず、エアラインの登録国の合意無しに、EU ETSのEU域内の飛行への一方的な適用を継続し、EUを離発着する国際便の部分にまで拡張して適用するという提案が行われている。」とA4Aの広報担当であるKatie Connell女史は述べた。「この提案はまだ初期の草案なので、我々は欧州連合理事会と議会に対し、国際合意に沿った法律修正のための審議過程を踏むよう要請する。」

 欧州のエアラインはその一方で、現在EU ETSに起きていることについて異なる見解を持つが、彼等が対峙する欧州委員会の提案に基本的には満足していない。

 主要航路を運用する航空会社の代表である欧州エアライン協会(AEA)は、空域方式に反対ではないが、地域的MBM制度の双方の合意原則がICAOで採用されたことを考慮した上で欧州委員会が提案を行っていることに驚いたと述べた。

 「AEAが懸念しているのは欧州委員会が現在推奨している一連の活動が、我々をここまで連れてきた良識を無意味なものにしかねないということだ。」AEAの広報担当であるViktoria Vajnai女史がGreenAir誌に語った。「欧州委員会の提案が欧州議会と欧州連合理事会との共同決定段階に移行するにあたり、国際社会を含め、利害関係者を広く巻き込んだ検討がなされるものと信じる。そのような制度を採用すれば、再度、第三国の不服従と報復の可能性を誘発しかねないと我々は考える。」

 「EU域内の規制から空域での規制へという、提案された移行は、対象範囲を世界の航空由来のCO2の9%から13%までわずかに増加させ、或いはEUレベルでなら27%から39%まで増加させる程度で、同じ政治的障害物を解き放ったままであり、ICAOを通じて国際的な制度を設立しようというエアライン産業の要望を阻害しかねない。」

 地域航空会社を代表する欧州地域エアライン協会(ERA)の立場は、今や、2020年から実施される予定の国際的MBMについて合意に達するのを見こして、2016年の次回ICAO総会の結果が出るまで、EU ETSを完全に保留するべきであるというものである。

 他方で、欧州低運賃エアライン協会(ELFAA)は、ICAO総会は「実施のための明確な予定表があり、地域的制度から特定地域の制度までの暫定的制度の具体的な方策を伴った、国際的なMBMのための工程表を出せなかったのだから」欧州委員会の提案の内容では十分でないとして批判した。

 ELFAAは声明で述べた。:「法的に証明されたEU ETSの完全施行に戻すとしてICAOに明確な最後通告を出すかわりに、その独自の排出管理制度をさらに劇的に弱体化するような提案を欧州委員会が急ぎ行うのを目にしてELFAAは驚きそして失望している。欧州委員会の提案は適用対象外が増えて環境保護には不十分であり、現在うまくないやり方で適用制限されているEU/EEA内の運航者への、差別的で歪みを生む影響を修正する方策も不十分である。」

 「その上、EU ETSの規制対象範囲を劇的に狭めるのであれば、欧州委員会の提案はまた、排出量の割当に関する基準に従って再調整を行う期日の不履行を棚に上げることになり、これはEU/EEA内の運航者を不利にする。EU ETSの現在の一時的適用制限状態におけるこの異常事態に取り組むどころか、提案された修正案は最も早い場合でも2018年までは状況を正すつもりはないことを明確にしている。」

 ELFAAの事務局長であるJohn Hanlon氏はEUに対し、EU ETSの信頼性と環境的資質の回復を要求し、欧州連合理事会と欧州議会に「この提案によって損をするのは環境であり、欧州航空と欧州の消費者であるし、あまりよく練られていないこの提案を支持しないよう」要請した。

 ブリュッセルに本拠があるNGOのTransport & Environment (T&E)は、排出物規制は欧州の空域内に制限するという欧州委員会の提案は、ICAO加盟国の懸念を認めたものであるが、2016年にMBMを国際的に実施する場合の詳細に関しICAOプロセスで合意が得られなかった場合の代替条項を入れ損なっているとコメントした。T&Eによると、空域で規制するやり方は、長距離便に由来する、EUの規制対象外の航空排出物の巨大な容量を捕らえ損ね、世界規模では公海上の飛行のせいで、航空排出物の78%が規制されないまま残るとのことだ。

 2016年のICAO合意に関して不確定要素が残っているので、T&EはETSの規制対象を2017年から拡大し、あらゆる出発便の最初の50%とあらゆる到着便の終わりの50%が規制対象となるよう大陸間便を50/50の割合で規制するようEUに要請した。

 T&Eの航空管理者であるBill Hemmings氏は、欧州委員会の提案の発表を気候にとっての「灰色の日」と表現した。「外国と業界からの圧力が欧州に、欧州独自の航空排出物規制法を最低限まで縮小するよう強いたのは恥ずべきことだ。」と彼は述べた。「航空排出物が急激に増加する一方、欧州の航空気候対策は自らの翼を折ってしまった。」

 欧州委員会の立場を唯一人で支持して、Aviation Environment FederationのTim Johnson氏が、ICAOの根拠となるシカゴ条約が、ICAO総会の気候変動決議の条項より先に進んで地域的空域内で行動を起こす法的根拠をもたらすのだと述べた。

 「de minimisu条項のようなICAO決議の重要な要素や、ICAO総会に先立ち米国を含む多くの加盟国が示した空域方式への支持を認識しながら、欧州委員会の提案が元来の野心を可能な限り引き出すためのやり方としてこれを使うのは間違っていない。」と彼は述べた。

 「しかし環境的観点からすると、規制対象になる排出物を大幅に減らすことになるので、これはEU域内に由来するGHG排出物と取り組むために可能な全選択肢の再調査が必要になるであろう、2016年の次回ICAO総会後に、EU加盟国が再検討する一時的方策であるべきだ。」

 次週火曜日(2013年10月22日)のブリュッセル会議でこの提案について航空産業は欧州委員会と意見交換する機会が得られる予定である。

リンク:
欧州委員会のEU ETS提案
ICAO第38回総会気候変動決議

海外情報紹介 抗議が出始めたが、EU ETSを空域で実施するにあたり、ICAO決議はEUによって完全に順守されるだろうと欧州委員会の弁

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1773

 2013年10月24日木曜日 − 今月これまでにICAO総会で合意された気候変動決議を順守し、欧州域内の空港を離発着するフライトによるEU/EEA空域内の航空排出物を対象とするという欧州委員会の提案について、第三国との協議を行うだろうと欧州委員会は述べた。しかし、第三国の合意にかかわりなく、欧州内空域を規制する権利が欧州にはあると欧州委員会は言い張っている。この欧州の計画に最初に公に反対を表明した国がインドであり、米国上院にEU ETS禁止法案を共同提案しているJohn Thune氏はこの問題を運輸長官であるAnthony Foxx氏に提起したと受け止められている。昨日、欧州委員会はICAO総会の結果に沿った、EU ETSに利用可能な選択肢の影響評価を公開した。それと共に、ICAO総会決議を順守して、EU ETSの適用対象外になるだろう国家のリストも一緒に公開した。
 EU ETS提案を説明するために招集された火曜日の利害関係者会議で、市場に基づく国際的な対策開発のためのICAOの作業工程に欧州は集中しなければならないと欧州委員会の当局者が述べた。彼等によれば、たとえ世界の航空交通の55%にあたる国家がパラグラフ16の内容を留保していても、ICAO決議の物議を醸すパラグラフ16を欧州委員会の提案は順守するだろうとのことだ。

 パラグラフ16aでは、新規にMBMsを設計する場合とEU ETSのような既存のMBMsを国際航空で実施する場合、国家は「前向きな二国間及び/または多国間の協議に従事するべきであり、合意に達するために他国家との調整に従事すべきである。」と書かれている。当局者が指摘したのは、これは合意に至らない場合の実施を禁じてはいないということである。ICAO総会では、欧州の国々は「双方の合意」原則を拒否し、留保に入った。

 欧州委員会の提案の下では、炭素制度へ必要な調整を可能にするためと、EU加盟国が自国の法律に変更を反映させるための、1回限りの、2年間の対応期間がある予定である。そのために、準拠性に関する報告もなければ、2015年3月の終わりと4月までにそれぞれ、航空機運航者が排出枠を放棄するための要件もないだろう。当局者はこのことがまた、第三国との二国間交渉を行うための時間を稼ぎ出すと信じている。

 パラグラフ16bは、国際民間航空活動の占有率が、国際有償貨物トンキロ全体の1%の範囲に満たない発展途上国を離発着する飛行経路上にMBMsを適用するにあたっての例外を認めている。欧州委員会はこの例外を適用する予定であること、世界銀行によって低所得、或いは中流の下層所得経済に分類される国家を「発展途上」と定義し、EUの関税規則で、一般特恵関税制度(GSP)の恩恵を受ける国家と定めた。昨日、欧州委員会は範囲に満たない、GSPの恩恵を受ける73カ国のリストを公表した。欧州経済地域(欧州連合加盟国28カ国とアイスランド、ノルウェーそしてリヒテンシュタイン)内にある空港から直接離発着することのない国家はリストから除外されている。

 利害関係者会議では、EEAの外側にあって現在は除外されているスイスが、まもなく航空のEU ETSに加わる見込みだと当局者が公表した。

 欧州委員会の提案への速やかな反応として、インド政府の航空大臣であるKN Shrivastava氏はロイターに対し、欧州委員会の提案は総じてICAO総会の決定と相容れないので、ICAOが介入すべきだと述べた。ロイターの報告にはまた、米国エアラインのEU ETS参加を阻むことを米国の運輸大臣に許可する法律を共同提案した上院議員のJohn Thune氏が、Anthony Foxx大臣にあててECの提案はその法律に直接違反していると手紙を書いたと書かれている。空域による方式をICAOで提案した米国の政権は、公式には炭素排出制度に関する欧州の計画に対してまだ反応をしていない。

 まず最初に共同で決定する段階で合意されるべきところ、欧州委員会の提案は現在欧州議会とEU加盟国によって調査が行われている。その提案がICAO総会決議を順守しているとの信念が欧州委員会にはあっても、EU加盟国はインド、ロシアそして中国のような国々とのさらにもう1ラウンドの闘いに巻き込まれるのを警戒する可能性がある。

 先週の中国への貿易使節団の訪中時に、英国の大蔵大臣であるGeorge Osborne氏は、中国の建設会社がマンチェスター空港を空港都市として開発するための8億ポンド(13億ドル)のプロジェクトの主要な投資者になることを公表した。

 ロンドンでの月曜日の英国空港運営者協会の年次総会でのスピーチで、英国の航空大臣であるRobert Goodwill氏は、市場に基づく国際的対策の開発のICAOでの国際的進展を歓迎した。彼は付け加えた。:「私は、ルクセンブルクでの最近の欧州連合輸送委員会で、国際的な合意確立のために我々は作業すべきで、欧州においてのみ進めて競争を歪めるべきでないと明言した。」

 彼の発言を説明して、運輸省の広報担当がGreenAirに語った。「航空による排出物を扱う国際的合意に向けてICAOで前向きな進展が行われたのに続き、欧州委員会は航空のEU ETSを修正する提案を採用した。英国は提案を詳細に検討しており、これからの交渉の過程において、EUや国際的なパートナーらと密接に連携して作業をするだろう。」

 昨日公表された影響評価の中で、欧州委員会は2020年までの期間において国際航空排出物を規制するにあたり、EUによる活動の可能な選択肢を提示した。それによれば、その期間中にEUが確保せねばならない2つの明確な目標があるとのことだ。すなわち、国際航空からの全排出物を対象とする国際的なMBMの、2020年までの開発促進と実施であり、実施の保留であり、EEA内に離発着する全フライトからの排出物を対象とするEU ETSを継続することである。

 航空機運航者がEEA空港に離発着するフライトの全排出物に責任を持つようなEU ETSの完全実施を復活させることは、さらに国際的な反発を招き、国際的MBMについてのICAOの将来の交渉を妨害する危険性があると昨日の影響評価では認めている。

 空域の選択肢或いは、欧州委員会が混合選択肢と呼びたがる選択肢には国際政治の受容性が高いという利点があるとのことで、その理由は排出物の対象範囲がEEA内に限られているからとのことである。それはまた、現在の監視、報告及び検証(MRV)システムに基づいた実施が可能で、経由便も直行便も等しく対象とするため、公平性をゆがませる可能性を避けられる。EU ETSの完全実施と比較して、空域の制限が海岸から12海里(ノーチカルマイル(NM))まで拡張される領海で定義されるか、海岸から200NMまで拡張される排他的経済水域によって定義されるかによって、対象になる排出物は混合選択肢で39或いは47パーセントまで減る。

 「時計を止める」方式と同様に、EEA内部のフライトのみ残してEEAの外側のフライトは一般的に対象外とする場合、EU ETSの完全実施の場合に対象となる排出物と比較してたった25%しか対象にならない。

 欧州委員会が考えている他の代替案には、EEA内の全フライトと非EEA国家へ出発する便を対象とする出発便選択肢がある。影響評価によれば、この方式は、EUがICAOのMBMの枠組みの地理的範囲として最初に提案したものだったが、多くのICAO加盟国に拒否された。

 ほとんどの環境NGOが好むのはEU ETSの対象範囲をEEAの外部に離発着する便の50%に制限する50/50の選択肢だったと、欧州委員会は報告したが、この選択肢はICAOで検討されることはなかった。出発便と50/50選択肢の両方で、完全実施の排出物の62%の対象範囲になると欧州委員会は見積もっている。

 欧州委員会が検討したが、競争力にマイナスの影響を与え、監視・報告・検証を完全に変更することが必要で、新規に法的な異議申し立てが出されるリスクがあるという理由で却下したアップストリーム選択肢からも同様の対象範囲は可能だったろう。この選択肢の下では、制度を順守すべき存在は航空機運航者の代わりに燃料供給者になり、燃料供給者はEEA空港へ販売した燃料に応じた排出枠を放棄することになっただろう。燃料供給者の棚ぼた利益を避けるため、すべての排出枠は競売にかけられ、無料排出枠が割り当てられることはなかっただろう。法的リスクはそれが燃料税或いは燃料費に相当すると判断され、従ってシカゴ条約と航空業務合意の下では容認されないだろうということだ。

 欧州委員会の文書はまた、選択肢の社会的影響や管理上の影響を考察し、様々な利害関係者やこの件に関して行われた公的諮問について報告している。

リンク:

欧州委員会−影響評価
欧州委員会−対象外となる国家一覧
欧州委員会−法制に関する立案