原記事:
http://www.bbc.com/news/science-environment-298558842014年11月2日 最終更新16:34
BBCニュースの環境担当記者Matt McGrath氏による記事
危険な気候変動を世界が避けようとするなら、化石燃料の無制限の使用は2100年までに段階的に廃止すべきと国連が後援する専門家チームが述べている。
世界の大部分の電力は2050年までに炭素排出の少ない動力源を使用して生産することが可能であり、そうしなければならないと、気候変動に関する政府間パネルは最終報告書で述べている。
もしそうしなければ、世界は「深刻で、広範囲に、元には戻せない」ダメージを被ることになる。
何も行動しなければ、必要な行動をするよりも「かなり多くの」費用がかかることになるであろうと国連は述べた。
科学者と官僚の間で1週間の激しい議論がなされた後、
IPCCの統合報告書はコペンハーゲンで日曜日に公表された。
2015年の終わりまでに気候に関する新国際条約を制定することを目指し、作業に従事している政治家らへの情報提供がこの報告書の目的である。
気候変動が危険なレベルに達するのを防ぐための
2009年に承認された2゜C以内の目標値に世界の温暖化を制限する場合、排出物削減が必須であるとこの報告書は述べている。
2050年までに電力部門では再生可能エネルギーの割合を現在の30%から80%に増やすべきであると報告書は示唆している。
長期的には、炭素を回収し、貯留する(CCS)技術を持たない化石燃料による発電は「2100年までにほぼ全面的に止める」必要があると報告書は述べている。
「科学のこれまでの主張」統合報告書では気候変動の
原因、
影響及び
可能な解決策の概要を記した、IPCCのこれまでの3報告書を総括している。
以下のように、多くのよく知られた状況を再度記述している。:
■地球温暖化は「明らかな事実」で、気候に人間が影響を及ぼしているのは明確である。
■報告書によれば、1983年から2012年までの期間は、過去1,400年の間で最も気温が高い30年間であったと考えられる。
■地球温暖化の影響は、海の酸性化、北極氷原の溶融、多くの地域での穀物生産の衰退で、すでに世界中が経験している。
■炭素削減で各国が協調しなければ、これからの数十年で温度が上昇し、今世紀終わりまでには産業革命以前のレベルを約5゜C上回る可能性がある。
「科学がこれまでに伝えてきた。」と国連の潘基文事務総長は述べた。「そのメッセージに曖昧さはない。各国首脳は行動せねばならない。時間は我々の味方ではない。」
「気候変動対策には膨大な費用がかかるという迷信があるが、」と潘氏は語った。「何もしない方がよほど費用がかさむだろう。」
米国国務長官であるJohn Kerry氏はこの報告書を「炭鉱のもう一羽のカナリヤ」と表現した。
「科学を無視しようとする者、或いは疑う者は我々人類すべてを大きな危険にさらし、我々の子や孫も大きな危険にさらすのだということがこの報告書の中ではっきりと説明されている。」とKerry氏は声明で述べた。
英国のエネルギー・気候変動大臣であるEd Davey氏は報告書を「これまで出された中で最も包括的で綿密かつ堅固な気候変動評価書である。」と表現した。
「報告書は世界中が耳を傾けるべき明解なメッセージを発している。我々は今、気候変動に対して行動しなければならない。今や責任は政治家にある。来年パリで新しい気候協定を締結し、未来の世代のために我々は世界を守らねばならない。」と彼は言った。
「英国はこれまで世界を先導してきて、世界は我々に追いついている。2030年までに欧州で少なくとも40%の炭素排出を効果的に削減するという歴史的合意は、自国の排出量に上限を設定し削減しようとする世界各国において英国の気候変動法がコピーされたように、欧州中で英国の気候変動法が再現されているということを意味する。」
率直な表現IPCCの中核的執筆チームのメンバーであるオックスフォード大学のMyles Allen教授は言った。「所有するすべての化石燃料を廃棄物であるCO
2を処理しないで燃やすわけにはいかないが、大気中にCO
2を放出することなく燃やすことも難しい。」
「危険な気候変動を止めたい場合、炭素回収方法の開発が不可能であれば化石燃料の使用は止めるべきである。」
BBCの科学担当編集者であるDavid Shukman氏による分析国連の気候報告書の表現は長い年月で徐々に増えてきたが、今回の報告書は選択肢について以前よりもはっきりと説明している。
これまでのように化石燃料の燃焼を続けることはできない、そして今世紀終わりまでには段階的に化石燃料の使用を止めるべきであるという結論は、各国政府に対し非常に厳しい選択を提示する。
炭素排出物が回収されて貯留されるなら化石燃料の使用は継続できるというような体裁のよい表現を使おうとIPCCは試みた。
しかしこれまでのところ、商業的に稼働しているその種の設備は世界でカナダに1つしかなく、技術開発は多くの人々が望むよりかなり遅い速度で進んでいる。
そこで、このことが主要政府の対応の可能性について難問を提起している。
実質的なことでは何も合意を得られなかった悲惨で機能不全の2009年のコペンハーゲンのサミットに戻って考えてみると、経済的圧力にさらされるか国内の現実に直面している中で、美辞麗句はいともたやすく崩壊することが実証された。
石炭、石油、ガスの将来に関するこの報告書の表現の明瞭さは活動家らに歓迎された。
「排ガスをゼロにしなければならないと報告書は主張しており、これはこれまでにない主張だ。」と世界自然保護基金のSamantha Smith女史は語った。
「何かと言えば、それが無理なく実施可能であり、経済を損なうことはないと報告書は主張している。」
熾烈な綱引き状態化石燃料に関するIPCCの討論では、電力部門がどれだけ炭素排出を減らす必要があるかを示す図に関して激しい闘いがあったと、BBCの環境担当記者であるMatt McGrathがコペンハーゲンからレポートしている。
あるオブザーバによると、この図に含める内容について「サウジアラビアが激怒した。」
国連気候変動枠組み条約の第2条項に関して文章を入れることでもう一つの重要な論争があった。
それは、排出物削減に焦点をあてたい国々と経済発展の権利が第1であるべきと考える国々との間でたちまち綱引き状態になった。
ボリビアとサウジアラビアが思いがけず連合を組んだことから、最終的には基本報告書から関連条項が完全に抜け落ちることとなった。
話し合いに参加した何人かによれば、気候変動への取り組みとサステナブルな開発には密接な関係があったとのことである。
「国によって視点が異なる。」とインペリアル・カレッジ・ロンドンの教授であり今回の報告書のreview editorであるJim Skea氏は語った。
「しかし科学的視点で考えると、我々には両方が必要だ。我々は二つのことを同時にする必要がある。」