原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1844EU ETSについて(環境省):
http://www.ets-japan.jp/ovs/ovs_4_2.html 2014年4月3日木曜日−欧州議会は今日、欧州議会の報告責任者達と欧州連合理事会が代表する欧州加盟国の間で調停が行われた妥協案に賛成する投票を行った。欧州委員会が提案した、EEA空域内の国際便からの排出物も規制対象とする空域提案よりむしろ、欧州経済地域(EEA)内のフライトのみを航空関連EU ETSの規制対象とする、EU ETSの『時計を止める』(STC)適用制限が、今回の投票結果によって続行されることになるだろう。大多数が妥協案に賛成するにもかかわらず、−賛成票458、反対票120、棄権24だった。−投票の前にこの問題についての討議で欧州議会議員の間で激しい議論の応酬が行われた。STCはそうして2013年から2016年の終わりまで継続し、2016年のICAO総会で、2020年から市場に基づく国際的制度実施について合意に至らなかった場合は、2017年からEU ETSは本来の完全な規制範囲に戻ることをこの決議は認めるものである。
投票後の話では、欧州議会の先導報告責任者であるPeter Liese氏が、欧州連合理事会との話し合いの結果に完全に満足しているわけではないが、妥協案を採用することは間違いではなかったと述べた。妥協点が見つからなかった場合、加盟国は空域方式を実施しそうもなかったので、加盟国とはよりよい協定を結ぶことが可能だと信じていた環境委員会(ENVI)の委員長であるMatthias Groote氏がたとえ反対しても、航空関連EU ETS指令全体に終わりを告げていた可能性がある。
欧州議会の様々な委員会と欧州連合理事会の間においてこの問題に関してはいかなる妥協点も見つけられそうにない状況にあったが、あらゆる方面で歩み寄りが行われたと、昨夜の討論でLiese氏は欧州議会に告げた。「私と同僚議員らの意見は必ずしも同じでは無かったが、妥協点を得るために私は元来の提案を変更し、我々は何とかよい結論を得ることができた。」
彼によれば、欧州連合理事会との合意により、規制対象を欧州内に制限するのは2013年からの4年間で、ICAOが国際的MBMについて満足な結果を出せるかどうかによって、2017年から欧州を離発着する全国際便を規制対象とする完全施行に戻ることになる。
2016年のICAOでの合意は排出物低減に結びつかなければならず、差別なく全加盟国に適用されるものでなければならず、「だから第2の京都議定書では困ります。」とLiese氏は述べた。2015年にパリで開催されるUNFCCCのCOP会議ですべての国家が署名するような上首尾の結論が得られなければ、ICAOにおいて合意が得られることはあるまいと彼と同僚議員らは考えていると、Liese氏は述べた。
欧州委員会の気候変動担当委員であるConnie Hedegaard女史は欧州議会に対し、欧州理事会から欧州委員会の空域提案の支持を得られなかったことは残念だったと述べた。「欧州委員会はよりよいことをしようと闘い、よりよいことを選ぼうとしたのだった。」と彼女は欧州議会議員に告げた。「欧州の自尊心と外部からの評価を高め、気候対策にとってさらなる貢献ができたはずだった。我々の現在の立場はそうならなかったが、妥協案が航空による温室効果ガス低減のための欧州の規制を継続するための根拠をもたらし、全利害関係者にとって切望された法的確実性を順守期限前にもたらすこととなる。」
「代わりに、我々の国際的なパートナーが、EUがこれまで示した建設的で柔軟な姿勢を認めることを期待し、我々は今や2016年までに重要な国際協定を創出するための進展に全神経を集中することになろう。」
彼女は第三国との接触で、合意に達した妥協案に関して積極的な反応があったことを明かした。
昨年ICAO総会で下された決定は、欧州が圧力を加えた結果であり、2020年からの国際対策の採用にこの決定が今度は結びつかねばならないと彼女は付け加えた。「だからこそ、2016年のICAO総会が、国際航空に関する市場に基づく本格的な国際対策の詳細を明らかにしなければならない。」
彼女は欧州議会議員らに語った。:「この件には私も不満を感じるところがあるが、これ以上修正することなくこの譲歩案の内容に賛成票を投じて欲しいと思う。」
欧州議会議員であるJacqueline Foster女史は、彼女自身が「強いられて」この譲歩案を支持することになるだろうと言ったが、Hedegaard女史に語った内容は、元来の提案が「愚かでかつできの悪い発想であって、必要とされる仕事を脅かしてきた、企業への負担以外の何物でもない。我々は世界を相手に取り引きをしようとしているのであって、世界を支配しようとしているわけではない。」というものだった。欧州委員会のこの問題に関する扱い方を痛烈に批判して、彼女はHedegaard女史に言った。:「あなた方は傲慢で無能の印象を与えた。欧州委員会のやり方は繊細さに欠け、恩着せがましいものだった。」
この件に関する産業委員会(ITRE)の報告責任者であるEija-Riita Korhola女史は、欧州委員会が自らの提案実現に熱心になりすぎて、事態が悪化する実例になったと述べた。「将来また同じ事が繰り返されないとよいが。」
しかし、欧州連合理事会との間の妥協策は支持できないので空域提案に賛成票を投じるだろうという、Liese氏と並ぶ影の報告責任者であるMatthias Groote氏を含めた、欧州議会議員の一団がある。
Groote氏によれば、ENVIが妥協案を拒否したのはあまりにも欠点が多すぎたからだが、票決が50/50に割れたのはこの件に関し、いかに欧州議会の意見が割れているかを示すことになったとのことだ。欧州は他の国家勢力に対して「平身低頭している」と彼は付け加えた。
欧州連合理事会との間で合意を得ようとしたのは勇ましい挑戦だったが、譲歩案は支持できないと緑の同盟を代表してSatu Hassi女史は述べた。「エアラインに駆り立てられたロシアや中国からの圧力のせいでEUが後退するのは残念だ。」
欧州議会議員の同僚である英国人のFoster女史と活発にやりとりした怒りのChris Davies氏は、中国その他からの脅威が欧州を気弱に見せてしまい、譲歩案の支持は「まったく恥ずべきことになろう。」と言い、以下を付け加えた。:「もちろん我々は国際協定を欲するが、ICAOは2001年から市場に基づく国際制度が欲しいと言い続けてきた。2020年に制度が得られる可能性は花畑の下に妖精がいる可能性と同じ程度である。我々は国家的及び地域的行動を起こさねばならず、この[空域方式]はまさに我々が率先してやるべきことであり、世界に対する良き前例となり、欧州の指導力を見せつけることになる。欧州連合理事会には本当に失望させられた。」
しかし、社会民主党がこの問題で意見が割れ、欧州議会で最大の、中道右派のEPP党 が三者会談で合意した譲歩案支持に回ったことで、投票は自身がEPP党のメンバーであるLiese氏にとって楽勝であると分かった。
この決定は今や、4月終わりまでにEUの官報で法律が公表されるより先に、4月14日の閣僚会議の席上での採択のために欧州連合理事会へ戻される。EU ETS制度の規制対象であることが変わらない航空機運航者は自社の2013年の排出量報告を2015年3月末までは行う必要がないかまたは、2015年4月末までは炭素クレジットを放棄する必要はないだろう。
EU ETSの規制範囲はEEA内でのCO
2排出量が1,000トンに満たない、ビジネスジェットのような小規模航空機所有者を例外とするところまでさらに狭められるだろう。EEA空港とEU加盟国の最も外側の区域の間、EEA空港とスイス間の飛行もまた規制対象外となる。
環境NGOがこぞって失望を表したのに対し、この投票に対する欧州エアラインの反応は、賛否両論の混じったものでしかなかった。
欧州エアライン協会(AEA): 「これからの3年間の方針を明確にする現実的な方式をエアラインに対し欧州議会がもたらしたことについてはAEAは歓迎するけれど、市場に基づく国際制度が施行される予定の2020年までの法的確実性と計画の安定性が欲しいところだ。」とAEAのCEOであるAthar Husain Khan氏は語った。「新しい規制範囲は主に欧州内飛行ルートを運航するエアラインにさらなる負担をかけることになるが、航空関連ETSを修正することで欧州議会は国際レベルでのさらなる進展のための道筋をつけた。国際問題の国際的解決策を確保するための唯一の方法である、ICAOでの進展をAEAは完全に支持する。」
欧州地域エアライン協会(ERA): ERAの事務局長であるSimon McNamara氏は言った。「EU ETS制度全体を保留するよりこの譲歩案を選んだことで、欧州は欧州内便を運航する欧州の運航者に不利益をもたらし、損害を与えている。この制度の規制範囲はまた、EUの航空排出物の約20%まで縮小され、これでは環境的信頼性もあったものではない。ERAの会員は非常に嘆かわしい決定により、ひどい打撃を被ることになろう。」
ERAの会長であるBoet Kreiken氏は付け加えた。:「ERAの立場は常に、ICAOの協議の場において本物の国際制度に関する満足のゆく合意が得られるまでは、EU ETSの制度全体を全フライトについて保留にすべきだというものだ。我々は引き続き、航空が環境に及ぼす影響に取り組むという目的を支持し、ICAOが果たすべき役割を支持するが、少なくとも2016年までは単に欧州内のみでETSを実施するというのはいいニュースではない。」
「この決定により、欧州内便を使う欧州市民は飛行機を利用する場合の費用が余計にかかることになる。欧州エアラインの最終的な損益が打撃を受け、環境効率のよい航空機や手順に投資できる資金を結果的に減らすことにつながるだろう。最終結果として、保護されるはずの環境と市民に損害を与えることになろう。」
「欧州にはいまだ真の航空政策が無いことをこの決定が明確に示している。欧州委員会や他の利害関係者と共に、理路整然とした、一貫性があって欧州に公平な航空に関する総合的展望を発展させる作業に従事することをERAは望んでいる。」
欧州低運賃エアライン協会(ELFAA):
声明は以下のように述べている。:「2016年までEU ETSの規制対象を大きく狭めたままで施行を継続するという、欧州議会における今日の投票結果にELFAAは失望を表明した。(EU内を規制対象とすることで捕捉されるEUの航空排出物は20%に満たないという)この政治的譲歩による犠牲者は環境であり、欧州内の運航者である。そしてこの大いに差別的な結果による費用の不利益を単独で被るのは欧州の消費者であり、意味のある環境的利益もない。」
「差別的な『時計を止める』適用範囲を2016年までさらに延長するための、三者会談における協定案での立場を、欧州連合理事会が再考するようこれからELFAAは要求する。もしそれが無理なら、ELFAAは、そのような差別に対する法的な異議申し立てを現在は停止しているが、再開せざるを得ないだろう。」
運輸と環境(T&E) T&Eの航空担当部長であるBill Hemmings氏は言った。:「気候変動がすでに人間生活のあらゆる面に影響を与えているとIPCCの最新報告が示したまさにその時に、航空によって増大する排出物を抑制しようとする世界で唯一の法律を事実上骨抜きにする選択を欧州政府と政治家らが行うとは。欧州空域における排出物を規制することは我々の権利であるばかりでなく、義務でもある。貿易戦争だと騒ぎ立てる人々はそのことを忘れているようだ。」
「2016年のICAO総会において顕著な進展が無ければ、航空に関するETSの完全実施に戻るという約束を履行せよという、政策決定者に対する圧力は圧倒的なものになるだろう。」
世界自然保護基金(WWF): WWFの欧州政策事務所の欧州気候とエネルギー政策のリーダーであるJason Anderson氏は語った。:「ICAOで国際的合意を得るために『時計を止める』適用制限を継続することは、環境に代金を支払わせることになる。というのも今やEU ETSの航空排出物の規制範囲は75%まで縮小されるだろうからだ。EUは成功する保証もなしに、航空排出物規制のために妥協をしすぎた。」
「我々が今考えなければならないのは、航空に関する市場に基づく対策の採用、理想的には気候変動対策を行う発展途上国を支援する収益を生み出すような対策の採用を確実にするため、BRICS、米国及び他の諸国家がICAOにおいてさらに建設的な役割を果たすことである。我々はまた、エアライン産業が航空排出物低減のための国際的及び地域的対策の支援を引き続き強固に継続することを考える必要がある。それらが実現することで、EUの払う犠牲が無駄にならないことになる。」
リンク:
欧州議会−投票の点呼