原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=20542015年3月5日木曜日−航空部門が規制対象となった最初の年である2012年に、ドイツは欧州排出量取引制度(EU ETS)を順守しなかった航空機運航業者のリストを、EU加盟国として公表する最初の国となった。ドイツの排出量取引局(DEHSt)によれば、リストに挙げられた44の運航業者に総計で5,363,400ユーロ(590万ドル)の罰金が科された。大部分は小規模な航空機運航業者だが、主要なドイツのエアライン2社すなわちエア・ベルリンとコンドル航空は意外にもリストに載った。 この2社は報告時の些細な相違のためにわずかな罰金が科されただけであるとコメントしている。2012年に欧州経済地域(EEA)内でフライトを運航し、縮小されたEU ETSの規制対象になっているが、それぞれが所属する国の政府がEU ETSの順守を許可していないという中国国際航空とアエロフロート航空がリストに無いことが注目に値する。
EU指令の第16条の下で航空部門がEU ETSの規制対象となり、EU加盟国は、自社の排出量を相殺するに十分な排出枠を放棄するという要件に違反しているが、いまだに放棄していない航空機運航業者について、EU加盟国は自国が管轄する分について名前を公表しなければならないとしている。2012年に関しては、2013年4月終わりまでに排出枠が提出される必要があったが、それから2年近く経っても、数不明のエアラインと小規模の航空機運航業者が非順守のままである。
航空機運航業者がこれまでに放棄していない排出枠については、CO
2排出量1トンあたり総計100ユーロの罰金を科すよう、EU指令は加盟国に求めている。さらに運航業者は、罰金に加えて必要な数の排出枠を購入して放棄する必要がある。
排出枠を放棄するために、運航業者は欧州連合の登録台帳に口座を開設せねばならず、台帳では報告され検証された排出量データがEUの取引ログ(EUTL)に記録される。もし、ここまでを運航業者が対応済みで排出物が報告されていれば、排出枠を放棄しないことに対する罰金を算定することは簡単である。しかし、運航業者が排出量を報告しておらず、この管理業務を任命された国内の所轄官庁からの働きかけに応じなかった場合には、所轄官庁はユーロコントロールのデータに頼らねばならず、困難が生じる。運航業者にはその後推定排出量に対して抗議する時間が与えられ、罰則の実施を遅らせることができる。
各加盟国はEU指令を異なったやり方で各国の法律に置き換えることになるため、執行手順や「名指しして、不名誉とする」報告のやり方も国毎に違う。これまでに明らかになったのは、加盟国は特に欧州外の非順守エアラインのリストは誰もが見られるような形で公開することには抵抗がある。世界規模での市場に基づく対策に国際レベルでの合意を得て、欧州の炭素取引制度の廃止を目指す討論が継続中のため、政治的な感覚で議論をたたかわせている。EU ETSの完全実施の場合の規制対象は、EEA(欧州経済地域)内のみならず、EEAを離発着する全便の排出物を網羅することを目的として作られたため、インド、中国、ロシア、米国のような主要国によって激しくかつうまく戦わされた(訳注:これらの国家の猛烈な反対を受け、EUは完全実施を棚上げせざるを得なくなった。)。
EEA内空港間のフライトを運航する米国エアラインは、昨年EU機関で合意が得られた、EEA内を規制対象とする縮小範囲でのEU ETSの運用では大部分がそれに従っている。しかし、同様に欧州内での運航を行っているインドと中国のエアラインは、大部分が国有のアエロフロート航空のようなロシアのエアライン数社と同様に、管轄当局からの命令に従うことをいまだに拒んでいる。欧州で運航しているインドの主要エアラインであるエア・インディアとジェット・エアウェイズは英国が指定した所轄官庁の環境局には報告したが、2012年にEU内フライトを運航したかどうかが不明で、両エアラインとも2012年に適用される規制を順守したようにはみえない。英国の法律の下ではEU ETSを順守しないエアラインの名前を毎年6月終わりまでに公表することになっているのだが、今のところ2012年に関するリストは公表されていない。
アエロフロートと中国のフラッグキャリアである中国国際航空は共にドイツに報告しているが、DEHStが公表したリストに両エアラインの名前はない。2012年の順守期間中に中国国際航空はアテネ−ミュンヘン間で定期旅客便を運航し、アエロフロートはフランクフルト−ヘルシンキ間で定期貨物便を運航した。DEHStが個別のケースについてコメントする予定はないが、リストに載っていないのは「正式な支払い命令」が出ていないためであるかもしれず、その場合には基本的にまだ事務処理が完全に終了していないので、後日、リストに他のエアライン名を付け加えるかもしれないとコメントしている。
DEHStによれば、航空機運航業者が2012年の義務を果たさなかったことのために、これまでに総計5,363,400ユーロ(590万ドル)の追徴税が科され、そのうち罰金の最大額は3,017,800ユーロ(330万ドル)で最少額は80ユーロ(88ドル)であった。
ルフトハンザに次ぐドイツ最大のエアラインであるエア・ベルリンは1,000ユーロ(1,100ドル)に満たない「比較的少額の」罰金を科されたとコメントした。「これはDEHStに提出した排出枠数と2012年の特定の空港の組み合わせにおける実際の排出量との間の些細な差異のためである。」と広報担当者がGreenAir誌に説明した。
コンドル航空の広報担当者は自社の罰金の理由は、データ送信に係わる技術的問題で、すべての問題はこれまでに満足な解決をもって終了したと語った。
他にDEHStのリストに載っているエアラインには米国の貨物航空のライアン国際航空とエバーグリーン国際航空があるが、両者とも破産を申し立ててその後運航を停止している。リストに挙がった他の米国エアラインには1年前に運航を停止したワールド・エアウェイズがあり、EUの取引ログによると、必要数の排出枠は放棄したが、ことによると、それは期限後ではなかったかもしれない。
リストとしては公表していないが、フランスの所轄官庁であるDGACは最近、非順守の航空機運航業者に対して罰金を科し始めたと考えられている。フランドル当局はエアライン名を公表してはいないが、数ヶ月前、サウジアラビア航空に約800,000ユーロ(880,000ドル)の罰金を科したとみられている。
欧州委員会によれば、2012年は100社を超えるEU以外の航空機運航業者がEEA内フライトを運航し、そのほとんどがEU ETSを順守したと当局者が指摘している。
リンク:
DEHSt−2012年に関してEU ETSを順守しなかった運航業者リスト2015年3月11日付更新記事:
DEHStへの追跡取材により、DEHStのウェブサイト上に掲載された詳細に関する記述の一部や、それを元に書かれた記事では、罰金について誤解を生む恐れがあることをGreenAir誌が知った。2012年に欧州指令を順守しなかったことによって納付通知書を受け取るか罰金を科された航空機運航業者が全部で60社あり、金額の総計は5,363,400ユーロ(590万ドル)となった。ウェブサイト上のリストに掲載された運航業者44社は「確定」とみなされ、総計597,000ユーロ(630,000ドル)の罰金を科され、その最小金額は100ユーロで最高金額は203,600ユーロである。他の運航業者16社は総計4,766,400ユーロ(500万ドル)の罰金の通知書を発行されたが、異議が唱えられたので罰金はまだ確定していない。これらの運航業者についての詳細や罰金の範囲については、罰金が「法的に有効」になるまでDEHStは明かすことができない。ウェブサイトで触れられた3,017,800ユーロ(330万ドル)の罰金1件は、EU ETSの規制対象である固定設備(訳注:発電所や工場など)に関するもので、航空機運航業者に対しての罰金ではない。記事では欧州指令を順守しない航空機運航業者のリストを公表した最初の加盟国がドイツであると述べたが、実際にはイタリア当局もまた2012年に欧州指令を順守しなかった13の運航業者リストを公表していた(これに関する情報へのリンクは
ここから)。