海外情報紹介 地上で聞こえる騒音を小さくするために着陸機の進入を急勾配にするヒースローの試行が開始される

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2121

2015年8月19日水曜日−英国・ロンドンのヒースロー空港は地上の住民が聞く騒音を小さくするために、着陸時の進入角度を急勾配にする試行を開始する。ICAOが設定した国際基準は大部分の空港では3度のグライドパスであるが、英国の民間航空局の承認を得た今回の試行ではタッチダウンのほぼ8海里(10マイル)手前から航空機の進入角度を3.2度にし、この角度はヒースローの滑走路の進入方式4種類すべてで使用されることになっている。2016年3月16日まで続く今回の試行では、ヒースローでの進入角度を3.5度まで上げることができるかどうか試されることになる。この試行は強制的なものではないが、必要な航行機器を搭載した多くのエアラインがこの試行に参加するとヒースローは確信している。フランクフルト空港が2012年10月に似たような試行を始めたが、結果はまだ評価中である。
導入されたなら、ヒースローは地上で聞こえる騒音を小さくするために急勾配の進入角度を取り入れた英国で唯一の空港になるだろう。ILS(計器着陸システム)の好ましいグライドパスとしてはICAOが1978年に2.5度から3度へ上げたが、障害物クリアランス要件に合わせるため3度を超えるグライドパス角を採用する約30空港が欧州にだけある。そのような空港の1つがロンドンシティ空港で、この空港ではアプローチ角が5.5度だが、ヒースローのような主要国際空港で経験されるよりも様々な型式の航空機によって使用されている。(訳注:ロンドンシティ空港で5.5度のアプローチ角が可能なのはそれができる型式のみが運航されているためなので、単純にヒースロー空港と比較するのは現状とそぐわない部分がある。)

ヒースローによれば、空港から8海里の最終進入降下開始点では航空機の高度が通常より170フィート高くなることが見込まれるが、証拠が示すように、それによって騒音が小さくなっても恩恵を被るのはわずかな数の住民であると空港は認めている。試行の期間中は移動式騒音監視装置が配備され、試行結果を後日報告書にまとめることを空港は約束した。

フランクフルト空港を運営する事業者であるフラポートの2013年の持続可能性報告書では、急勾配の進入試行の初期評価段階では、測定地点や航空機の型式によって最大騒音レベルが0.5から1.5 dB(A)までの幅で減少することがわかったと述べられている。この試行はフランクフルト空港の北西滑走路に限定して実施され、評価の一環で住民との協議が進行中であるとフラポートの広報担当者が語った。

ヒースローの今回の試行については、ヒースロー空港諮問委員会や地域社会騒音フォーラムを含めたある程度の利害関係者にはすでに概要を説明済みであるとヒースローは述べた。

ヒースロー拡張反対運動のHACANは、空港近隣地域の住民からの苦情よりも到着時の10マイルのアプローチ開始地点の東方のロンドン住民からの航空機騒音の苦情を受け取ることが増えると報告している。このグループのジョン・スチュワート氏の考えでは、空港からの距離が遠い場所に住む住民は騒音から解放されることが少ないので、低高度の航空交通流が絶えず流れることで影響を受けると予想される地域ではないところに移動する可能性がある一方、このために空港周辺住民が航空機騒音を容認する度合いが高まる可能性がある。

「南東ロンドン上空を部分的に通過する飛行機の数は多数ある可能性があり、4,000フィート以下の高度では大部分の航空機である、1時間あたり40機を超える機数をHACANでは記録している。」とスチュワート氏は語った。

「ヒースローは変わり、騒音を含めて地域社会へ及ぼす空港の影響改善に取り組むため新しい進入方式を採用した。」とヒースローの持続可能性・環境の責任者であるマット・ゴーマン氏が応じた。「我々の『騒音削減のための青写真』は地元の地域社会からの意見を原動力として、騒音を削減するために革新的な思考をもって取り組むよう業界を啓発するためのものである。急勾配の進入方式を実施することで正しい方向へ1歩踏み出すことになり、静穏化のための他の手順やより静かな航空機を運航させるための動機づけと合わせれば、たとえ空港を拡張しても騒音の影響を受ける住民の数は確実に減るだろう。」

騒音に敏感になる時間帯内で、騒音にわずらわされないと予測できる時間帯を地元の地域社会が持てるようにするため、ヒースローは空港を使用するエアラインに対し、日々の夜間定期便の到着時間を守るよう要請した。空港の報告によれば、静穏飛行プログラムの開始以降、定時運航を守るエアラインの数は変化していないが、それ以外のエアラインは各四半期毎に違反を繰り返している。政府が法的に制限しているので、このことが早朝の時間帯に運航されるフライトの数全体に影響を及ぼすことはないとヒースローは指摘しているが、空港の技術チームは積極的にこれら業績の悪いエアラインに係わって業績改善を促している。

静穏飛行の番付表の第7回目が公表され(2015年1月〜3月)、ヒースロー空港におけるキャセイ・パシフィック、KLM、LOT、そしてフィンエアーの騒音関連業績が改善されたため、ヒースローはこれらエアラインを褒め称えている。

リンク:
ヒースロー空港−航空機騒音

地上で聞こえる騒音を小さくするために着陸機の進入を急勾配にするヒースローの試行が開始される

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2121

2015年8月19日水曜日-英国・ロンドンのヒースロー空港は地上の住民が聞く騒音を小さくするために、着陸時の進入角度を急勾配にする試行を開始する。ICAOが設定した国際基準は大部分の空港では3度のグライドパスであるが、英国の民間航空局の承認を得た今回の試行ではタッチダウンのほぼ8海里(10マイル)手前から航空機の進入角度を3.2度にし、この角度はヒースローの滑走路の進入方式4種類すべてで使用されることになっている。2016年3月16日まで続く今回の試行では、ヒースローでの進入角度を3.5度まで上げることができるかどうか試されることになる。この試行は強制的なものではないが、必要な航行機器を搭載した多くのエアラインがこの試行に参加するとヒースローは確信している。フランクフルト空港が2012年10月に似たような試行を始めたが、結果はまだ評価中である。

海外情報紹介 航空機排出物の長期間暴露は年間約16,000の早死の原因になるとMITの研究で見い出す

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2117

2015年8月7日金曜日−米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが実施した調査によれば、民間航空機が排出する微小粒子状物質とオゾンは世界全体で年間約16,000人の早死の原因となっている。離着陸時(LTO)の排出物が及ぼす健康影響も同様に重要である欧州と北米を除いて、最も大気質や健康に影響を及ぼすのは巡航時の排出物であるとこの調査チームは見い出した。金銭的価値に換算すると航空排出物に長期間さらされることで起こる早死は年間約210億ドルの費用に相当すると算出された。航空の大気質にかかる費用は気候変動にかかる費用と同程度で、事故や騒音にかかる費用よりもかなり大きいことを研究者らは見い出した。
Environmental Research Lettersに報告されたその研究は、巡航高度におけるジェット燃料燃焼による排出物が原因となる世界規模の早死の出現率を筆頭著者のスティーブン・バレット教授とMITの研究チームが調べた前回の2010年の算定に続く内容である(記事参照)。他の調査で特定の空港周辺の大気質の影響について調べたものはあったが、今回の調査は初めて、空港近隣地域(20km以内)や局地的及び世界規模の健康影響を定量化した。バレット氏によると、以前は巡航時の排出物と空港近辺の排出物のどちらが実際により問題なのかを知るのは難しかった。

航空機は呼吸器疾患との関係があるオゾン(O3)と、肺がん、循環器疾患、呼吸器疾患の発生率を高める微小粒子状物質(PM2.5)を排出する。これら2種類の汚染物質のうち、16,000の早死の大部分(87%)に関係づけられるのは微小粒子状物質である。

北米ではLTO(離着陸)による排出物は巡航時の排出物と比べると43%の早死に寄与しており、欧州ではこの割合は49%でアジアでは9%であるが、この違いは、航空機が原因の大気汚染に暴露する人口の差のためである。全世界的にはLTOでの排出物による早死は、総計16,000のうちの25%に達する。

研究結果は、世界の平均的暴露量よりも高い航空機に起因したPM2.5濃度に暴露される近隣地域住民がいる空港が23%で、その17%が北米にあり、33%が欧州、34%がアジアにある空港で、残りの16%がその他の地域にある空港であるとしている。

空港から20km以内に居住する合計約5,000人(世界規模)の住民が航空排出物が原因で毎年早死していると推定され、欧州では空港近隣の死亡の38%を占めるとその研究で述べている。「我々の結果は、これまでの分析と対照的に、航空からの一次排出物のPM2.5が、空港周辺での暴露で捉えられたならば、健康上のリスクに著しく影響するようである。」と研究者らは語っている。

航空排出物による早死を貨幣価値に換算するため、研究者らは国別に統計的生命の価値を定量化した。米国については環境保護庁(EPA)の推定値に基づき、他の国々については一人当たりの国民所得に基づいて算出した値とした。研究では、航空が排出する汚染物質の健康影響を貨幣価値に換算すると航空による気候影響費用と同規模であり、航空の死亡事故の費用と騒音の費用を一桁、つまりおおよそ10倍程度上回っていることを示している。

このことが示唆するのは、燃料燃焼が削減されると得られる環境上の利益は、気候においても大気質においても同程度であると述べている。さらに、と研究者らは付け加えて、排出物削減につながる航空用バイオ燃料が環境に及ぼす影響を評価する場合、大気質が健康に及ぼす影響は気候に及ぼす影響と同程度の大きさであるかもしれない。それは、パラフィン系バイオ燃料はSOx排出物を排出せず、放射強制力をもつブラックカーボン(黒色炭素、すす)の排出を削減すると考えられるからである。

2013年に報告された研究によると、人間活動によって微小粒子状物質が増大し、毎年約210万の死亡の原因となり、約470,000人がオゾンの増加によって死亡していると見積られている。

別の調査によれば、海運による大気汚染物質が米国だけで年間60,000の死につながり、肺病及び心臓病からの医療費が年間3,300億ドルに上っている。欧州では、国際海運の排出物が原因となる早死数を、学術調査が50,000と見積もっているが、この部門は2020年までは最大の単一大気汚染源になりうる部門であり、陸上の全排出源をすべてあわせた量を上回ると環境NGOのTransport & Environmentが述べている。

「大気汚染関連の健康上のリスクに航空が係わる割合は、現在はごくほんのわずかであると覚えておくことが重要である。」とバレット氏はenvironmentalresearchwebで語った。「しかし、他部門では大気汚染につながる排出物が急速に削減される一方、航空部門では排出物が今世紀半ばまでに2倍あるいは3倍に増加する見通しで、削減のための新たな方策を見い出すという大きな課題がある。」

ヒースロー空港の騒音軽減運用試行が「住民10万人の支えになった。」

 2012年11月5日から2013年3月31まで実施された、ヒースロー空港の騒音軽減運用試行について報告書が公表され、8月14日付けのBBC NEWSに内容が紹介されました。この運用試行については以前この欄にも掲載しましたが、特定地域の住民を早朝の航空機騒音被害から守るため、到着便を特定の飛行経路へ誘導するというものでした。ご参考までに要約を掲載します。

原文:
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-23692965
ヒースロー空港の関連サイト2カ所:
http://mediacentre.heathrowairport.com/Press-releases/100-000-get-noise-respite-from-night-flights-625.aspx
http://www.heathrowairport.com/noise/noise-in-your-area/early-morning-trial
(ここから報告書がダウンロードできます。)

NATSの関連サイト:
http://nats.aero/blog/2013/08/heathrow-trial-provided-100000-with-noise-respite/
(ここからも報告書がダウンロードできます。)

ヒースロー空港の騒音軽減運用試行について:
ヒースロー空港で騒音軽減地区を設定、運用試行を開始

海外情報紹介 米国の研究が気候および結果として燃料消費と排出物を増大させるフライト時間との間の関係を見い出す

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2111

 2015年7月24日金曜日−高高度の航空機が温暖化に及ぼす影響についてはいまだにわからない部分があるが、民間航空の排出物と気候変動との関連性についての広範な調査が行われた。しかし、惑星(地球)の温度が上昇すると飛行機旅行にどのような影響を及ぼすだろうか。マサチューセッツにあるウッズ・ホール海洋研究所(WHOI)とウィスコンシン・マディスン大学の研究者らは、気候と航空路線の飛行時間が長くなることとの間の関連性(飛行時間が長くなれば燃料消費と排出物が著しく増大する)を見い出したとしている。Nature Climate Change誌で公表されたばかりの調査を率いたWHOIのクリス・カルナウスカス氏が述べているのは、大気中に次々にCO2が追加流入される結果、大気循環中に新たに発生した変化がフィードバックされ増幅される可能性があるということである。この調査では過去20年間のホノルルと米国西海岸の3空港間のフライトをフライト毎に調査し、飛行時間と巡航高度での日々の風速データを比較した。

海外情報紹介 エア・インディアが航空に関わるEU ETSを順守しなかったことに英国が罰金を科す

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2106

 2015年7月16日木曜日−航空に関する2012年のEU ETS(欧州連合域内排出量取引制度)を順守しないことで、エア・インディアと他の航空機運航事業者4社は総計95,456ポンド(150,000ドル)の民事制裁金を英国当局から科せられた。報告を義務づけられた各事業者の年間排出量について十分な排出枠を2013年4月末までに放棄しなかったと各事業者はみなされていた。そのうちの2社が順守することになってからは2012〜2014年の3年間分の排出枠を放棄したが、欧州内空港間のフライトの炭素排出量を現在対象としているこの欧州制度に従うことを、エア・インディアはインド政府の指導でこれまでのところ拒否している。エア・インディアがこの罰金を支払うべきではなく、この件は外交上の問題として扱われるべきだったとインド政府の担当者がGreenAir誌に対して語った。EU ETSに関する排出量を英国に報告するインドのもう一社のエアラインであるジェット・エアウェイズは最近、類似の罰金に対する訴えを退けられたが、制度を順守するようになってからは罰金通知リストには載っていない。

海外情報紹介 NGOsが納得していない中で米国環境保護庁(EPA)が二酸化炭素排出基準に通じる航空機排出物対処のための規制プロセスを開始

(今回の記事は決まったことではない意見の羅列であるため、以下は主要部分の要約としました。原著を直訳したものではありませんので、不足の場合は原著をお読みください。)

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2092

2015年6月11日木曜日−環境団体が規制措置を求めて8年間争った後で、米国環境保護庁(EPA)は航空機が排出する温室効果ガス(GHG)排出物が気候に悪影響を及ぼすので対応が必要であると結論づけた。EPAは米国が全世界の航空機のGHG排出物の29%の排出源で、航空が米国では未だにGHG基準の対象にしていない単一にして最大の移動排出源であると述べている。この問題に取り組むため、ICAOで開発中の国際的CO2排出基準に関してEPAはすでにFAAと共に作業を行っているが、この基準がICAOで承認されれば、米国大気浄化法の下で米国は国内でも採用する必要があるであろう。エアライン産業が自産業の世界的目標に寄与するだろうと主張しているこの基準はしかし、厳格性が十分でないので排出物削減にはほとんど影響が無いのではとNGOsは危惧している。そのなかでEPAは差し迫る60日間のパブリックコメント期間を広報した。
昨日公表された規則制定案の先行公示(ANPR)は、ICAOが設定する国際的なCO2排出基準をEPAが採用するための第一歩であり、その194ページの文書は、民間航空機排出物が気候に及ぼす影響とICAOによる基準設定のプロセスに関する情報を明らかにしている。

2009年にEPAが自動車と小型トラックは気候に悪影響を及ぼすと断定して以降、人為的な気候変動に関わる科学は、航空機エンジンが排出するGHGsが人の健康と幸福を危険にさらす気候変動原因である大気汚染と関連があるというEPA提案の危険性認定根拠を強化し、支援してきた。提案された原因と関連性との見解は、航空機エンジンCO2排出物に関して今後取りまとめられる国際基準と米国基準を整合させるための最初の一歩であるとEPAは述べている。また、今日の動きは炭素汚染の大規模排出源からの排出物を減らすという(オバマ)大統領の気候変動行動計画の目標達成を支援するものである、とEPAは表明している。

訴訟を起こしている米国の環境団体は、航空機による炭素汚染を規制するためのこの重要な第一歩を踏み出したEPAを称賛するが、航空機が気候変動に及ぼす影響の大きさを考えるとEPAが現在検討中の暫定的な取り組みでは目的達成に不十分であり、これら有害排出物を減らすために大気浄化法に関するEPAの権限を使う代わりにICAOの後に続き、今後10年の排出物増大を固定する従来通りの基準を設定することをEPAは提案していると批判する。ICAO理事会で承認されて2016年内に開催予定の総会で承認される前に、NGOsや産業の代表もメンバーとして参加するICAOの航空環境保全委員会(CAEP)の2016年2月の会議で、この国際基準については合意が得られると見込まれているが、この基準の厳格性と適用性については重大な疑問が残っている。90-95%の航空機がすでに適合しているような基準を設定しようとしているので、ICAOの基準では実質的な削減は見込めない。また、ICAOがこの基準を適用するのは20-30年の耐用年数がある現在の航空機ではなく新型機にのみ適用する予定で、段階的導入をさらに先送りすることになると批判している。

クリーン輸送に関する国際協議会(ICCT)の分析では、2020年に適用される基準は2030年に世界で運用される機体の5%しか対象にならず、ANPR文書についての解釈では、基準が目指す現在の方向性には米国は完全には満足しない可能性があるとしている。さらに、効力のある実行手段を持つ基準でICAOが合意しなければ、米国がさらに先を行くことをANPRは暗示しているとの解釈もある。これは、領海の外で運航するよりも米国領海内での航行に厳しい環境要件を適用するという、国際船舶について米国が採用したようなやり方と似たもので決着するかもしれないという期待からである。一方、EPAには大気浄化法の下で米国の航空機を規制する権限があるので、単に米国ではICAO基準を実施するのでなく、現在使用中の航空機も対象にしてICAOで熟考されている基準内容よりさらに厳しい基準をEPAは設定できないことはない。EUがEU域内排出量取引制度(EU ETS)で航空を対象に含めたように、EPAはCO2基準を米国の大気浄化法の要件に合うように設定でき、それについてはICAOのスケジュールに縛られるわけでもないということもICCTは認めている。

航空機エンジンに関する国際排出基準はまずICAOが制定し、続いてICAOのエンジン基準と少なくとも同程度の厳しい米国内基準を制定するためにEPAが規則の作成を開始したとANPRは言及している。しかし、ICAOを設立したシカゴ条約では、ICAO基準よりも厳しい独自の基準をICAO加盟国が採用する可能性を認めている。ICAOで国際基準が検討されているが、EPAが危険性を認定したことにより、それよりも厳しい規制をEPAが提案する可能性があるとの解釈がある。

エアライン産業の業界団体である米国エアライン協会(A4A)は、ICAOが新型機用にCO2証明基準を開発する作業を支援したと語ったが、米国エアラインは米国の経済活動の5%を行ったとしても、温室効果ガス排出量では米国全体のわずか2%にすぎないと指摘している。また、A4AはICAO基準と内容が異なる国内基準について米国が独自に作業をするべきではないと警告している。航空は世界産業であるため、航空機排出物基準については引き続き国際レベルで合意を得ることが肝要であるとの考えのもとで、いかなる規制措置も大気浄化法下でのEPAの権限とICAOでこれから成立する基準との整合性がなければならないと主張している。米国の航空産業の燃料効率は1978年以降120%向上して、CO2排出を38億トン抑えており、昨年米国エアラインは2000年と比較して20%増の旅客と貨物を輸送したがCO2の排出量は8%減少したことを主張している。

航空機及びエンジンの製造業者を代表する航空宇宙工業協会(AIA)は、EPAによる航空機のGHG排出物評価の動きは航空宇宙産業にとっては驚きではなく、米国最高裁がGHG排出物は大気浄化法下での『大気汚染物質』であると定めた2007年以降、EPAは事業別にGHG排出物分析を行ってきたことによると解釈している。航空宇宙関連製造業者は航空部門のその他業者とともに、排出物削減と燃料効率向上のために知恵を絞ってきており、他の環境規制によっても厳しく規制され、航空機の安全性と耐空性の厳格な要件にも適合しなければならないと考えている。また、航空は経済成長と繁栄を推進する重要な世界産業であり、EPAがGHG排出物に対していかなる規制措置をしようと、大気浄化法とICAO基準のもとで考えられるEPA権限はそれに見合うものでなければならないとして、NPRが米国連邦広報に掲載されてから開始されるパブリックコメントの期間中の解答提出期限前に、AIAはEPAの提案を再検討し、会員企業と協議すると述べている。

なお、EPAの提案した危険性認定の対象は、最大離陸重量(MTOM)が5,700kgsを超えるジェット機と(これには民間機と大型のビジネスジェット機が含まれる)、MTOMが8,618kgsを超えるターボプロップ機であるとしている。

リンク:
米国環境保護庁(EPA)−航空

海外情報紹介 エアバスが、エアライン顧客の環境目標達成を支援するためのエコパートナーシッププログラムに乗り出す

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2085

2015年5月27日水曜日−エアバス社はサステナブルな航空従事プログラムを立ち上げ、顧客別のサービスおよびエアラインの乗客に対して環境影響低減を支援するための専門知識を提供する。このプログラムでは航空機技術、航空機運航、航空交通管理(ATM)、再生可能な航空用燃料を含め、エアライン毎に特定の目的に焦点を絞る。2016 年からこのプログラムが世界規模で他の運航業者にも拡大される前に、試験的なプロジェクトが現在3つのエアライン(キャセイ・パシフィック、英国航空、KLM)で作成されている。各社ともエアバスの最新型機であるA350 XWB の最初の引き渡しを待っているという状況下で、この3 エアラインはすでに、航空機騒音削減、耐用年数でのリサイクル利用、サステナブルなバイオ燃料開発に関しての共同プロジェクトを行っている。
エアバスの環境部門の広報部長であるダン・カーネリー氏は先週のツールーズにおける環境関連ブリーフィングで、最新技術を搭載したエアバス航空機を含め、2回の「完璧なフライト」が2011年と2012年に行われ、これらのフライトはベストの運航操作、最適化されたATMおよびサステナブルな航空燃料を活用して、最大で50%までのCO2削減の可能性を実証したとジャーナリストに対して語った。

「今や我々は、『完璧なフライト』と単なる実証を超えて、次の段階に進みたい。」と彼は語った。「この革新的なプログラムはサステナブルな航空という航空業界の目標に向かって、顧客にエアバスの専門知識やエアライン毎に合わせた製品とサービスを提供します。原則として、このプログラムは長期にわたる顧客との協力関係の枠組みであり、その目的は、エアバスの製品とサービスとで日々の環境性能を実証することです。」

航空機メーカー、エアライン、空港、航空航法業務プロバイダー、規制機関、環境NGOsを含む関連産業の協力が、世界の航空の自主的な排出物削減目標の達成においての鍵となったと彼は語った。

プレゼンテーションで、キャセイ・パシフィックの環境担当責任者であるマーク・ワトソン博士は戦略的パートナーシップがエアラインにとって基本的に重要であると語った。「簡単に言えば、我々が直面する環境課題の大きさと我々の気候変動への寄与の大きさを考えると、我々が単独で取り組むことは不可能で、パートナーシップのもとで取り組まなければならない。」と彼は語った。「技術が鍵であり、明らかに価値観を共有するエアバスのようなパートナーと協調して私たちのビジネスを合わせていくことが重要である。」

このことを理解するための実例としては航空機のライフサイクルでの取り組みがあるとワトソン氏は語った。「我々は製品の仕様やサプライチェーンの確立および運用効率をみながら、最も重要なことである耐用年数に達した機体をどうしたらよいのかを考える。Tarbesにあるエアバスの再生利用施設は本当に最先端の施設で、我々は社員と顧客に我が社のA340のうちの1機がどのように解体され、どのような複雑な処理工程があるのかをビデオで見せる予定である。」

決められたプログラムを通じて、このエアラインは、2016年の早い時期に引き渡しが見込まれる、注文中の48機のうちでの最初の1機のA350-900XWB型機が、香港国際空港においての騒音と排出物の問題をどの程度改善するか確かめるための共同作業を現在エアバスと行っている。これらの作業には、フィージビリティスタディ、データモニタリング、シミュレーションおよび試験が含まれるとワトソン氏は語った。

航空が経済成長や接続性に欠かせないとはいえ、その環境影響への問題はもはや欧州内に限定されないと彼は語った。「アジアにおいて空港拡大に対する意識が著しく変化してきており、我々は香港国際空港における第3滑走路の必要性と航空が果たす役割について先駆的な議論を行っている。ここ欧州で、特にヒースローで見られる多くの問題は現在、香港の状況として起こりつつある。3本の滑走路を運用することに関しての承認は得られたものの、実際の運用にはかなりの条件が付き、我が社の運航が許可されるための課題は増えている。雇用や繁栄など航空がもたらす幅広い恩恵のいくつかはしばしば、環境影響に関することで無いことになってしまう。」

「このすべてが、我が社の発展は持続可能な内容であることを確かに証明し、将来に責任ある成長の必要性を証明するようにという、フラッグキャリア(キャセイパシフィック)への相当な圧力になっている。我々の顧客、投資家、そして従業員はますます我が社の環境影響を気にかけるようになり、それに取り組むために我々が何をしているのかを知りたがっている。我が社には社会的及び環境的に責任ある企業であれという社是があり、業務のあらゆる場面で環境への配慮を確かなものにしたいと我々は考えている。」

エアライン産業による環境影響に関する取り組みが、成長が許されるための鍵であったと英国航空(BA)の環境担当責任者のジョナサン・カウンセル氏は同意し、協力企業と共同作業を行うことが環境問題に対処するには最も効果的な方法であると彼は主張した。

多くの焦点は炭素排出量を減らすことであったが、ここ数年は、周辺に人口が多い地域を抱える世界の主要空港において、空港拡張に対する反応としては、環境保全の課題である騒音がとりざたされるようになってきたと彼は語った。BAは利用する空港で騒音に悩まされる住民数を最小限にすることに専心してきたが、2013年との比較で2018年までには1便あたりの騒音を15%削減することを目標としている。

「この2年前、どのような協力がこの問題を進展させるかをみてきたが、エアバス社、ヒースロー空港、英国航空交通管理機関のNATSと『より静かな飛行』に関する協力関係を確立した。」と彼は語った。

このプロジェクトでは英国航空のA380型機のための騒音軽減出発方法を作り、この独特の方法では運航便の出発段階において一時的に推力を減らすことができる。これは特に最も人口密集度の高い地域のような、最も騒音に敏感な場所の上空でエンジン騒音を大幅に減らすことができるとカウンセル氏は主張している。最大5デシベルの騒音削減が達成可能なことが4回の飛行実験で確かめられたと彼は報告した。

これらの協力企業はまた、進入の角度を3度でなく3.2度とややきつくした降下も含め(あまりにも急勾配にすると、早めに着陸体勢をとる必要があるため、さらなる騒音を生む)、早朝の到着方法についての作業を行っており、今月試験が開始された。来年早々に第1段階の4度の進入からスムースに第2段階の3.2度の進入へと航空機を移行する2段階の進入に関する試験が開始される。

「急勾配の進入を早めに開始するとまだ高度が高いので、約10マイル離れたところで従来より1,000フィート高度が高くなり、その結果として騒音の5db削減になる。」と彼は語った。

サステナブルな代替燃料は、共同作業により航空部門の環境影響を減らす大きな機会を提供することができる別の領域であるとカウンセル氏は付け加えた。

エアバス社はすでにこのプログラム設立時の他の顧客であるKLMともサステナブルな燃料のための市場開発の共同作業を開始しており、2014年にA330-200でこのエアラインはアムステルダムからアルバとボネール島までの一連のバイオ燃料飛行を開始している。

「飛行中のエンジン性能を調査するプロジェクトの全てで、我々はエアバス社とともに熱心に作業をした。」とKLMの技術革新マネージャーであるEileen van den Tweel女史は報告した。「エアバス関与のプログラムはこの提携における理に適った次のステップと位置づけられ、我々はバイオ燃料以外の領域にまで我々の関係を拡大することができる。」

リンク:

エアバス社−環境効率
キャセイ・パシフィック
英国航空−責任ある成長
KLM−持続可能性

ヒースロー空港最新騒音番付表に見る、各エアラインの着実な進展に見られる成長の余地

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1936
2014年第1四半期の騒音番付表:
http://mediacentre.heathrowairport.com/Media-library/Fly-Quiet-table-Q1-2014-966.aspx

 2014年6月18日水曜日-ロンドンヒースロー空港を使用するエアラインの上位50位までの「静穏飛行」騒音番付表の第3回の四半期結果で騒音の改善が全体的に着実に進んでいることがわかるが、着陸機による連続降下進入(CDA)運航の数を増やせばさらに改善が見られるだろうとヒースロー空港は述べている。上位3位のエアライン-英国航空の短距離便、エアリンガスとバージンアトランティックのリトルレッド-はこれまで公表された3回の表においては変化がないが、バージンアトランティックの長距離便とキャセイパシフィックについては改善が見られたとヒースロー空港は称賛している。空港によればICAOの最も厳しいチャプター4の騒音基準で運航されている航空機の割合が2012年の97.6%から2013年は98.1%に増加した。ヒースロー空港はまた、最新の年間持続可能性報告を公表し、騒音の実態、地域の大気質と炭素排出について評価している。

海外情報紹介 欧州裁判所がスイス航空について審議を行うことになった折に、中国とインドのエアラインはEU ETSを順守することになる。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2084

2015年5月19日火曜日−強制的に欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)の対象にされたことで長い間EUと争っていた中国とインドのエアラインは、欧州経済地域(EEA)内で運航したフライトの2012年に加えて2013年と2014年の排出量についてもついに法律要件で完結した。この欧州の制度が本来の対象範囲から大陸間便を除外するという変更を行った後も、これらのエアラインは自国政府からこの欧州制度には対応しないようにという命令を受けていた。中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空とインドのジェット・エアウェイズは運航者所有のアカウント(排出量数値簿)を開設し、現在EUの登録簿には報告された排出量と放棄された排出枠の3年分が示されている。しかし、エア・インディアはいまだに順守の方向に向かっておらず、自国の所轄官庁から指示されているアエロフロート(ロシア)とサウジアラビア航空も同様に順守していない。その一方で、スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)は、2012年にスイスとEEA国家間で運航した自社便をEU ETSの対象に含めることについて、除外扱いと補償をEUの最高裁判所(欧州裁判所European Court of Justice)にて要求することが認められた。
航空関連EU ETSの国際的対立では、EU内空港で離着陸する全航空機をEU ETSの対象にするというEUの計画に反対して多くの主要国家(中国、インド、ロシア、USA他)が2011年と2012年に「不本意同盟」として団結することとなった(記事を参照のこと)。そのような反対に直面したことと、市場に基づく国際的対策に関するICAOでの調整を進展させるための支援として、EUが譲歩して「時計を止める」ために法律の修正を行い、航空がEU ETSの対象となった最初の年である2012年は対象範囲を狭めてEEA内のフライトのみを対象とすることになった。2014年の早い時期に成立した新しい法律ではさらにこの対象範囲を狭め、適用期間も2013年から2016年までと延長した。

対象範囲がEEA内のフライトに狭められてから、米国はEU ETSへの反対を取り下げて、ほとんどの米国のエアラインと貨物航空、ビジネスジェット機運航業者はこれまでにEU ETSを順守してきた。しかし、インド、中国、ロシアのエアラインはEU法の下で2013年4月30日を実行期限として義務づけられていたにもかかわらず、2012年に運航した欧州空港間路線のフライトによる排出量を現在まで報告しておらず、必要な量の排出枠の放棄も行っていない。これらのエアラインを管理する義務を負うEU加盟国の担当機関によって、順守するよう説得する努力が水面下で行われたが、現在までのところ進展は無い。加盟国はEU ETSを順守しない運航業者のリストを公表する必要があるが、政治的対立を避けるため、これら非順守国家のエアラインの名称はこれまでのところ公式に公表していない。

改正されたEU法の下で、2013年と2014年は特別なケースとみなされ、年1回報告する代わりに、運航業者には今年3月終わりまでにこの2年分の排出量を報告し、必要な量の排出枠を先月終わりまでに放棄するように要求された。

個々の運航業者アカウントの検証済みの全排出量と放棄された排出枠を記録し、その正当性を裏付ける欧州連合の取引記録(EUTL)によれば、中国国際航空の子会社を含めた中国のエアライン3社とジェット・エアウェイズは合計で63,000を超える排出枠(CO2で63,000トンに相当する)を3社の中で3年間についてこれまでに放棄した。この期間中に中国国際航空はアテネとミュンヘン間の定期旅客便を運航し、中国南方航空はアムステルダム〜ウィーン間、中国東方航空はフランクフルト〜ハンブルグ間で旅客定期便を運航した。EUTLはこれらエアライン4社の排出量がそれぞれの担当のEU管理局によって個別に検証され承認されたかどうかについては明確にしていない。

最近ジェット・エアウェイズは、一方的にEU ETSの対象にするのはICAO総会決議で得られた世界的な合意と主旨が一致しないことから、インド政府はEU ETS順守を禁じていたと主張する内容で英国に対する法的申し立てをしたが、敗訴した(記事を参照のこと)。このエアラインはGreenAir誌に対し、この裁判についてはコメントしたくないと語り、裁定に従ってEU ETSを順守する許可をインド政府から得たのかどうかも今のところ不明である。

これまでのところ、政府所有のフラッグキャリアーであるエア・インディアやアエロフロートによる業者所有のアカウントは開設されていないが、他の小規模なロシアとインドの航空機運航業者はEU ETSの規定に従っている。自国の政府が国際的EU ETS反対同盟の主要メンバーであるフラッグキャリアーとしてのサウジアラビア航空に対しては、140万ユーロ(160万ドル)の罰金がフランドル地方の担当機関によって科されたと考えられており、単一に科せられた罰金の中で最大のものの1つであるとフランドル地方の担当機関は報告している。

翌年4月末日の期限までに制度を順守しない場合には、排出したCO2の1トンあたり100ユーロの罰金の義務づけをEU ETS法は強く要求しており、ドイツ(記事を参照のこと)やイタリアなどのEU加盟国数カ国は、2012年の排出量についてEU ETSを順守しなかった航空機運航業者のリストを最近公表した。ドイツ環境庁(DEHSt)に報告する中国国際航空とアエロフロートはまだ最終的な排出量とはみなされなかったのでリストされていない。

Carbon Pulse誌の報告には、2012年の排出量についてエア・インディアを含めた海外の航空機運航業者6社に対して、EU ETSを順守しなかったため、英国当局は総額113,000ユーロ(128,000ドル)の罰金を科し、さらに罰金が科される可能性があると述べられている。英国法は、毎年6月末日までに非順守の運航業者の各年毎の完全なリストを公表するように求めている。

これまでにEU ETSを順守していなかった欧州以外の他のエアラインとして、エチオピア航空が2012年のEEA内の運航によりCO2排出量がほぼ20,000トンにまでなり、イタリア当局から罰金を科されたと考えられている(記事を参照のこと)。しかし、現在EUTLには2012-2014年の分としてアフリカの航空会社が62,655の排出枠を放棄したことが示されており、これは中国の航空会社4社とインドの航空会社であるジェット・エアウェイズを合わせたものとほぼ等しいほど多量である。

航空危機管理会社のAvocetは、EU ETS順守の経緯を追跡しているが、そのCEOであるバリー・モス氏は語った。「以前はEU ETSに違反していた多くの航空会社が現在はEU ETSを順守しているのを知って嬉しい。まだ明らかになっていないのは交渉の余地がない罰金が規制当局によって強制執行され、これらのエアラインが順守すべき2012年の排出分について罰金を払うかどうかである。もしEUがEU ETSを適用する運航業者に対して差別無く適用されることを望むなら、各加盟国は各国の法律に書き入れ、EU指令として行動しなければならない。」

その間に、ロンドンの最高裁判所で述べられたSWISSの訴えでは、EU加盟国でもなくEEA国家でもないスイスに離着陸するEU/EEA便に対し、2012年については「時計を止める」としたEU ETS順守免除の特例扱いがなされず、不当な差別があるとする欧州裁判所(ECJ)への付託要請が認められた。EU ETS制度の下で、SWISSは英国が担当する。

欧州委員会が一時的な執行停止を考えた時には、欧州委員会はEU ETSをスイス国内航空と同等に関連づけようとスイス政府と交渉中であり、改正したEU/EEA内のみを対象とする規制範囲にSWISS便を含めることに従う義務があるとスイス当局が考える理由が欧州委員会にはあった。Carbon Pulse誌によると、2010年に開始されたこの交渉の速度が遅かったが、航空が規制対象に含まれることが見込まれる今年には合意が得られると予想している。

「時計を止める」規制対象範囲が2013-2016年の期間についてもさらに見直しが行われた時に、スイスを発着する便は一時的に規制対象から外されたが、SWISSはこれらのフライトがEUの炭素制度の2012年の取引分からも除外されていないのは不公平だと主張している。このエアラインのEUTL登録内容からみると、2012年にEU/EEA国家を発着する自社便について総計123万トン少々の炭素排出量があるが、ほぼ600,000の無料排出枠を配分として受け取り、残り約630,000の排出枠の購入が残っている。1トンあたり約6ユーロの取引価格と仮定し、ある割合の排出物はEU/EEA内の便に由来するだろうという事実を考慮に入れると、いずれにせよ改正制度の下での責任は負うことになるので、必要な排出枠の購入費用は350万ユーロ(400万ドル)を超えていた可能性があり、それに関してこのエアラインは申し立ての中で英国からの償還を求めている。

これまでの裁判の判決では、スイスのような非EU加盟国に対してEUが異なる扱いをすることが同等扱いの原則により認められないことになっており、たとえこの原則が適用されたとしても、この場合には違反ではなかった。しかし、Vos判事が裁定する最高裁判所訴訟規則では、その原則の範囲に十分な疑いが存在すると判明し、今回のケースではその原則の適用について、EU指令が無効かどうかを裁定する権限を有する唯一の法廷であるECJへ付託することが正当化された。

「欧州委員会とEU議会は、スイスを除外扱いすることを正当化するための十分な努力をしていないという議論には説得力があると私は思う。」と判事は判決で語った。「まず、スイスが他の多くの第三国と比べ、政治的、経済的、地理的に全く異なる立場にあることは私も認める。しかしその特殊な立場により特別扱いは自動的に正当化されるということではない。」

SWISSの広報担当者はGreenAir誌に対してECJで引き続きこの件を追求することは認めたが、その詳細についてさらにコメントすることは断った。

もしECJがSWISSの訴えを認める判決を下した場合には、2012年にスイスを発着してこれらのフライトに関する排出量を報告し、それに従って対応する支払いを行い排出枠を放棄した他のすべてのエアラインに影響を及ぼすことになる。

欧州委員会は昨日、EU以外に本拠を持ち、EEA内でフライトを運航した100社を超える運航業者を含め、2013-2014年の期間は、EU ETSの対象になる航空排出物の99%でEU ETSが順守されたとの順守のレベルを報告した。EEA内にある空港間の航空機運航によるCO2排出量の検証済みの数字は、2014年には5,490万トンにのぼり、2013年の5,340万トンから2.8%増加したと述べている。

中国国際航空はアテネ−ミュンヘン間のEU内定期便を運航してきた。