海外情報紹介 英国の空港委員会は航空機騒音のうるささ評価のために従来とは異なる評価量を使用する予定

英国の空港容量を効果的に活用するための滑走路構想の候補選定にあたり、英国の空港委員会は信頼性が疑われるLeqよりも、より現状を反映する騒音評価量を使用する予定であると、英国HACAN(航空機騒音管理のためのヒースロー協会)議長であるJohn Stewart氏がブログで述べています。
以下は英国の空港関連情報サイトであるAirportWatchのニュースとJohn Stewart氏のブログです。

原記事:
http://www.airportwatch.org.uk/?p=19619

(AirportWatchのニュースより)
 ブログで、John Stewart氏は−ようやく、そして今更だが−空港委員会が今やLeqによる評価制度の改善を考えているとコメントしている。従来、航空機騒音を測定し、平均して出す数字はLeqだった。飛行経路下の住民が経験し、悩まされてきた、実際の騒音を典型的に表すものではないので、これは航空産業にとっては重宝なものであった。例えば、一定期間にわたって騒音事象を平均することで、騒音の面では1機のコンコルドが上空通過するのと、約4時間に渡り、2分毎にボーイング757が上空通過するのとは同じであると主張することができる。数千数万もの住民に対してより多くの航空機騒音の負荷を負わせる決定をする場合には、明らかに、実用にかなった騒音評価量とは言えない。コンター作成時には常に57Leqコンターが理論上、騒音が「やかましい」地域を示すために使用されてきた。これから、空港委員会は他の評価量も使うことになるだろう。そして、候補に挙がる滑走路構想を推奨する者はその評価量を使用するよう要求される。1つはLdenで、昼間12時間の間、騒音が測定され、;夕方は4時間;そして夜間は8時間測定される。;夕方と夜間はそれぞれ5デシベルと10デシベル加算され、これらの時間帯は背景騒音レベルが低いことが反映される。そして54 db LAeq評価量。そしてN70−これは上空を通過する、70デシベルを超える航空機の数を測定する。


(以下はJohn Stewart氏のブログ)
2014年1月27日
静かな革命

空港委員会は航空機騒音の測定法に静かな革命を起こすかもしれない。

騒音測定についてのブログ?!

読むのは止めようなんて思わないで下さい! これは空港委員会が発信する最も重要で影響力絶大なことの1つになるかもしれないので。

 数十年間、英国運輸省(DfT)は、現代の現実とはかけ離れ、恐ろしく時代遅れであるという圧倒的な証拠にもかかわらず、運輸省にとっては好ましい航空機騒音測定法にしゃにむに固執してきた。
 ハワード・デイビス委員長の本気の取り組みがその測定法の齟齬を解明し、今やその事実が白日の下にさらされることとなった。

 騒音(或いは騒音のうるささ)を測定するためにDfTが使用している現在の評価量−そしてこれはヒースロー空港が第3滑走路を増設する場合の評価量として採用した−は、Fulham、Putney或いはEalingのような地域では航空機騒音による問題は何もないと示している。

明らかに現実的ではない!

 このLAeqという、大きな批判を浴びている評価量は、日中16時間にわたって騒音を平均して算出し、次に通常1年間に渡って平均される。1日の内には静かな時間帯や1年の内には静かな日々もあるので、人々が騒音に悩まされている状況を正確には反映していないと大概の人は思っている。

 この評価量はまた、個々の航空機の騒音(これは年々小さくなっている)に重きを置きすぎて、上空を通過する航空機の数を十分に配慮していない(これは、不景気による一時的休下落はあれど、最近数年で劇的に増加している)。LAeqを使うと、2分間に1回の頻度でボーイング757が4時間継続して飛行するのと、1機のとてつもなくうるさいコンコルドが飛行してその後3時間58分は静かであるのとではうるささは同じということになる。これは明らかに現実を反映していない! 騒音のうるささのレベルが設定されている57 db LAeqは非現実的なほど高いレベルであるという批判も以前からある。

 空港委員会が候補に挙げた提案をこれから数ヶ月間で評価するにあたり、空港委員会の見込みとしては57 db LAeqの評価量を歴史的比較に使用するだけだろう。空港委員会の評価によって騒音測定のまったく新しい時代の到来を告げることになる。
文書のダウンロードは以下のアドレスから。
https://www.gov.uk/government/consultations/airports-commission-appraisal-framework

 騒音を日中は12時間測定し;夕方は4時間;そして夜間は8時間測定し、;夕方と夜のレベルにそれぞれ5デシベルと10デシベル加算してこれらの時間帯は背景騒音が低いことを反映させるという、欧州委員会が要求する評価量であるLdenを、空港委員会は使用し、候補に残った滑走路構想の推奨者はこの評価量を使用するようにと空港委員会は要求する。

 多くの人々が、これは騒音のうるささをずっと正確に表現できると主張する。空港委員会はまた、54 db LAeq評価量を使用するだろう。さらに、補足的評価量としてN70を使用するだろう。これは不動産の上空を通過する、70デシベルを超える騒音を出した航空機の数を測定し、地元住民が正しく理解するような、いわばわかりやすい情報をもたらす。

 そして評価量が影響を及ぼす数の違いを空港委員会は使うだろう。そして、英国運輸省が使用した数字は驚くべきものである。55 Ldenを使うとヒースロー空港の騒音の影響を受ける住民の数は725,000人で、;57 db LAeqを使うと245,000人まで減ってしまう。

 英国運輸省或いは個々の空港が57 LAeqだけを使って騒音のうるささを測定するという以前のやり方に戻るのは、デイビス委員会(空港委員会)の評価後は大変難しくなるだろう。

 滑走路の提案からどんな結果がでるにせよ、空港委員会は航空機騒音測定に静かな革命を起こし始めた。これからの政策は以前よりずっと正確な騒音測定に基づいて策定されるだろう。

http://hacan.org.uk/blog/?p=225

空港委員会の評価の枠組みは、騒音を48ページから56ページで取り扱っている。
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/
attachment_data/file/271679/airports-framework-consultation.pdf


以下の表は56ページに掲載されている。

訳注:HACANについて
 HACANのホームページによれば、HACAN ClearSkiesは航空機飛行経路の及ぼす影響で苦しんでいる人々のために組織的運動に心血を注ぐ欧州で最大の任意団体だそうである。
 HACAN ClearSkiesは1960年代にKACAN - Kew Association for the Control of Aircraft Noise(航空機騒音管理のためのKew協会)として誕生した。10年の間に略称が変わり、HACAN - Heathrow Association for the Control of Aircraft Noise(航空機騒音管理のためのヒースロー協会)になった。
 ロンドン地域とヒースロー空港からもっと離れたThames Valleyで航空機騒音が初めて深刻な問題となった1999年/2000年にHACANはHACAN ClearSkiesになった。活動資金は支持者からの、主に会員会費によってまかなっている。民間航空産業とは違って、この団体は納税者が治める税金を原資とする助成金や交付金は受け取っていない。
 航空交通が増大し、それにより新規の飛行経路が集結することで、ロンドンやThames Valleyのいたる所で航空機騒音と排ガスの影響を受ける人々が増加する。今やこの団体のメンバーは西はWindsorから東はGreenwichまで、北はMile EndとMuswell Hillから南はEpsomまでと、広い範囲から集まっているそうである。

海外情報紹介 航空関連EU ETSの『時計を止める』適用制限継続のための合意は、欧州議会の環境委員会委員の議員が投票でかろうじて拒否したため実現に躓く。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1837

EU ETSについて(環境省):
http://www.ets-japan.jp/ovs/ovs_4_2.html

 2014年3月19日(水曜日)−航空関連EU ETSについて2016年までは『時計を止める』適用制限を延長するという、EU加盟国と欧州委員会の間で得られた歩み寄りの合意を、今日の欧州議会の環境委員会(ENVI)の席上で欧州議員議員はかろうじて拒否した。この協定が承認されれば、市場に基づいた拘束力のある国際的対策(MBM)の2020年からの導入についてICAOで合意を得る余地を残すため、EU ETSの適用範囲を欧州経済地域(EEA)内のフライトに制限するという方式の地固めになるはずだった。三者会談の交渉でENVIの報告責任者である中道右派のドイツ人議員のPeter Liese氏がEU ETS規制に関してとりまとめた協定を、ENVIメンバーの内、緑の党と中道左派のメンバーは政党レベルで拒否すると決めていた。EEA空港を離発着する全国際便からの排出物をEEA空域を対象として規制するという欧州委員会提案を支持することについてENVIメンバーによる合意を得た時の賛成票の数に、今回の協定の賛成票の数は及ばなかった。しかし、Liese氏は来月の欧州議会全体の本会議の投票ではこの妥協案が承認されることを確信している。
 三者会談での合意に関してENVIの投票は賛成票が29で反対票が29だったが、これはつまりどちらの支持も過半数ではないということで、従って拒否と見なされた。

 この否決は、ENVIの欧州議会議員が「航空関連ETSへの脅しなぞ気にせず行動する」のを目指したスローガンを使って投票までの数日間に組織的活動を行った、支援団体であるTransport & Environment (T&E)にとっては勝利である。三者会談の合意には不備があるとして、T&Eは欧州議会議員に対し、「環境問題改善に、より効果的で公平な空域提案」を支持するよう促し、ロシア、中国そして米国など国際社会からの脅迫に屈服しないよう要請した。欧州委員会は新しい法律が合意を得られるまではEU加盟国がETS制度を強制する必要はないと言明しているので、欧州連合理事会を通じてEU加盟国との間によりよい協定の交渉を行う時間的余地がまだ残っているとT&Eは主張した。T&Eは空域で規制する方式に賛成している。

 「航空に関するETSは増大する航空排出物に取り組むために、現在実施されている唯一の国際的気候変動対策である。」とT&Eの政策担当役員であるAoife O'Leary氏はコメントした。「ETSを効果的に解体するだろう三者会談での歩み寄りは間違った協定であり、当然欧州議会に拒否された。この決定がEU加盟国の政治指導者達や産業界、その他の国家に、EUの主権は外部からの脅しには影響されないという明快なメッセージを送っている。」

 しかし、欧州連合理事会と合意した協定を拒否したことはフィンランド人の欧州議会議員であり、産業委員会(ITRE)のETSに関する報告責任者であるEija-Riita Korhola女史を怒らせた。「またしても民主的欠如の恥ずべき実例である。」と、彼女は少数派であるENVI委員会での投票結果についてツイートした。

 この投票結果は欧州の主要航空会社の代表である欧州エアライン協会(AEA)にも非難された。「ENVIの投票結果にはとても気をもんでいる。」とAEAのCEOであるAthar Husain Khan氏は述べた。「ENVIは今日、航空関連ETSを推進する道筋を明確にしそこねた。三者会談での合意が4月30日までに正式に採択されなければ、ETSの完全実施が適用されることになる。ここ数年我々が経験した、航空関連ETSを取り巻く国際的論争を考えると、ETSの完全実施は現実的な選択肢ではないと我々は考えるし、欧州のエアライン、欧州エアラインの運航やその従業員に悪影響を及ぼすだろうと我々は考えている。さらに、この動きが昨年ICAO総会で得られた合意を危険にさらす恐れがあり、国際航空からの排出物を低減するための国際的協定に到達しようとする努力を弱体化させる可能性がある。」

 欧州地域エアライン協会(ERA)は、ENVIの投票結果は「EU ETSの今後の混乱を増大させるだけだ。」とコメントした。

 ERAの事務局長であるSimon McNamara氏は、妥協案が投票によって通過した場合、欧州内の排出取引制度を作り出すことになると述べた。「この形式でのEU ETSは環境にほとんど利益をもたらさないかまたはまったく利益が無いだろうし、欧州のエアラインに不利益をもたらすことになるだけだ。」と彼は言った。「ERAの立場は常に、ICAOレベルでの国際制度では満足のいく合意をそのままにして、EU ETS制度全体を全便について保留すべきであるという立場である。」

 三者会談での合意は今のところ、提案された修正と合わせて、4月3日に開催予定の欧州議会全体での本会議にかけられることになりそうだ。T&Eによれば、Liese氏は本会議では今や空域提案に賛成するという元来のENVIの立場で出席せざるを得ない。

 しかし、投票後の声明で、Liese氏は、ENVIに支持された欧州委員会の空域提案よりもむしろ、欧州連合理事会と合意した歩み寄りの合意を、本会議が支持することに楽観的であると述べた。

 「EU加盟国の態度とEUの環境大臣や運輸大臣がこの問題に意欲的でないことに多くの同僚議員らが不満を感じていると私は知っている。」と彼は言った。「しかし、政治では現実と折り合いをつけなければならない。欧州議会自体は法律を施行できないのだし、妥協案を拒否した多くの同僚議員らは、さらに限定された方式が実施される可能性さえあると、議論の中で懸念を表明した。同僚議員らの多くはこの議論では残念ながらとても意見がまとまっているとは言い難い。」

 「私の所属政党[EPP, European People's Party]は妥協案を総会で審議し、圧倒的多数で妥協案を支持するだろうと私は確信している。TRAN[輸送委員会]の他の政党に所属する議員らがさらに意欲に欠ける提案を支持したことを考えると、我々と同意見な議員が過半数を占めることについて私はとても楽観的である。欧州委員会と欧州連合理事会からの正しい合図がこの点において有用になるだろう。」

海外情報紹介 ICAOの2グループが国際航空排出物に関する市場に基づく国際対策の開発作業を開始

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1836

 2014年3月12日(水曜日)−増大する国際航空排出物に取り組むために、市場に基づく国際対策(MBM)を開発するという任務をICAOが開始するにあたって、その作業の政治的及び実際的な面を扱うグループの設立はほぼ完了した。中期目標があり、必要な管理組織を持つ、明確な作業プロセスと計画表を、国連機関の管理組織であるICAO理事会がこれまでに承認したと、ICAOの広報担当が追認した。BRIC国家の提案によって設立された環境諮問団(EAG)は、ICAO理事会の指揮下で、地球規模の環境対策開発に関する作業を監督する予定であり、その作業はICAO加盟国、産業界やNGOの代表や専門家らから成る、市場に基づく国際対策のための技術的タスクフォース(GMTF)が主に担当する予定である。EAGとGMTFは共に、第一回目の会議を先週開催した。
 EAGは地理的範囲及び先進世界/発展途上世界の広範囲な代表としてICAO加盟国17カ国すなわち、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、中国、エジプト、インド、イタリア、日本、メキシコ、ロシア、シンガポール、南アフリカ、スペイン、タンザニア、アラブ首長国連邦、英国及び米国で構成される予定である。他のICAO理事会メンバーと理事会のメンバーでない代表もまた、産業界やNGOや他機関からのオブザーバーと共に、グループへ参加するよう招聘されることが見込まれている。

 ICAOの航空環境保護委員会(CAEP)の下に組織され、先週ワシントンDCにて会合を持ったGMTFは、このグループへと割り当てられた報告者や共同報告者らと共に、監視・報告・検証(MRV)の調査と、排出単位に関する適格基準の調査という2つの主要な作業の流れについて当初は重点的に取り組むことになっている。関連性のあるMBMの経験を持つ外部の専門家がCAEPメンバーとオブザーバーによって指名され、独立した立場からの助言が期待されている。

 MRV(監視・報告・検証)グループはCAEPが請け負ったこれまでの作業に基づいて調査を行う予定で、国際民間航空による地球規模の二酸化炭素排出のMRV(監視・報告・検証)に関する要件と手順を推奨することになっている。MRVグループは燃料燃焼や二酸化炭素排出に関連する方法論と共に、航空に関連した監視・報告・検証の既存の手順や実現する手順を調査する予定である。

 第二のグループは、国際的MBMの下で順守するための排出単位の適格基準を評価した後に推奨する予定であり、適合基準にはカーボンオフセットや排出許容範囲が含まれる。このグループはまた、既存及び提案されたMBMから将来、航空領域の潜在的必要性を満たすための排出単位をどの程度利用可能か評価し、この利用可能性が炭素市場の供給、需要及び価格に及ぼすかもしれない影響を評価する予定である。

 2016年2月のCAEPの公式な第10回会議(CAEP/10)に提出する報告書として結実させるために、2015年のスケジュールをさらに設定し、計画表の下で2つのグループは2014年9月のCAEP会議で報告と予備的結論を出す見込みである。

 昨年10月のICAO総会で承認された決議(A38-18)で要求されたように、国際制度開発作業の進捗状況を検討するため、ICAO加盟国や関連機関の職員や専門家が参加できる、国際的な制度に関する地域毎のセミナーを2015年半ばに開催する準備が行われるだろう。

 その一方で、4月に開始され、MBMの作業工程とは関わりなく、ICAOは一連の連続する「国際航空と環境」及び「加盟国の行動計画」セミナーを開始することになっており、これはICAOの各地域ごとに行われ、最後にモントリオールのICAO本部で最終行事が開催される予定である。

 2日間の「国際航空と環境」セミナーは民間航空や環境、エネルギー、産業、市民社会そして学究的世界に関与する当局の参加が目的だが、一般の人々も参加可能である。セミナーではCAEPの作業の概観やICAOの方針と多くの関連トピックの情報源となるだろう。それに続く、これも2日間のセミナーだが、ICAOが2010年総会の後、加盟国の航空排出物低減活動の一助として導入した、各国の国家的行動計画に責任をもつ「担当者」のためのものである。

 第一回目のセミナーはメキシコシティ(4月1日〜4日)で開催の予定で、次がペルーのリマ(4月7日〜10日)で予定されている。これ以降はカメルーン、ケニヤ、マレーシア、アラブ首長国連邦及びポーランドで開催されることになっている。

リンク:

ICAO – 環境保護
ICAOセミナー

海外情報紹介 『時計を止める』適用制限を継続するため、欧州議会の交渉担当との取り引きでEU加盟国は意志を貫く。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1833

EU ETSについて(環境省):
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/mrv-library/5.mrvprograms.html

 2014年3月5日(水曜日)−欧州政府の3機関、すなわち欧州議会、欧州委員会そして欧州連合理事会の交渉担当者間の合意により、完全実施ではなく1年間『時計を止めて』(STC)適用制限を行っていた航空に関するEU ETSについて、さらに2016年までSTCを延長することになりそうだ。欧州議会の環境委員会(ENVI)のメンバーに支持されて欧州委員会が提唱していたのは、EEA空域内での飛行部分については欧州を離発着するすべてのエアラインがEU ETSの規制対象となるという空域方式だった。しかし、国際的影響を心配したフランス、ドイツそして英国を先頭とした大部分のEU加盟国が行った譲歩は、ICAOでの国際的MBM(経済的手法)に関して拘束力のある協定が得られなかった場合には2017年からEU ETSを完全実施するという誓約程度で、どうもEU加盟国がSTC継続のための闘いに勝利したようだ。
 4月の欧州議会議員の総会で全体投票にかけられる前に、共同決定による合意はこれから3月19日にENVIメンバーの手に委ねられるだろう。ENVIの大部分の支持を得て法の修正が通過する見込みは五分五分でしかないとENVIの委員長であるMatthias Groote氏は言ったけれども、法の修正に関する欧州議会の報告責任者であるPeter Liese氏は、協定は受け入れられるだろうと信じている。

 2016年の遅い時期に開催されるICAO総会においてICAO加盟国が拘束力のある国際的協定に到達する可能性に関してLiese氏は悲観的なので、欧州委員会提案のように2014年から2020年まで空域を対象として排出量を規制するやり方よりも、2016年までSTCを継続し、2017年に完全実施に自動的に戻るやり方の方が、2013年から2020年までに規制対象になる排出量総計の点では最終的に環境には望ましいと判明する可能性があると、譲歩を正当化してLiese氏は述べた。

 排出量取引の収入を気候変動対策の目的に割り当てるという、Liese氏と彼の同僚議員によるEU加盟国への要求が通れば、加盟国に対し、収入をどのように使っているのか透明性を上げることを要求する文章が法律の改正文に差し挟めたのだが、大体が拒絶されたようだ。

 小規模の航空機運航者をETS制度の適用除外にする案の詳細は今のところ公表されていない。

 ブリュッセルに本拠を置くNGOであるTransport & EnvironmentのBill Hemmings氏はコメントした。:「急激に増大する航空排出物にはいずれ対処するという保証のみならず、重要な何らかの見返りさえ得られず、今回の協定で欧州政府は再度国際的な圧力に屈した。航空関連ETSの規制対象をEU内フライトまで縮小することは、要するに欧州の気候変動対策法の事実上の破壊を意味する。」

 彼は欧州議会議員に対し、この協定を拒否するよう要請した。この働きかけは、EU指令の包括的実施に違反があった場合には、自動的に対抗措置をとることと理解できる。


(訳注:原記事では、公表された合意の詳細について3月7日付で更新記事が追加されています。)

海外情報紹介 EU ETSを順守しない外国エアラインに対し、順守を強制する対応策をとるよう民間団体(NGO)がEU加盟国政府に対し要請

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1830

EU ETSについて(環境省):
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/mrv-library/5.mrvprograms.html

 2014年2月28日金曜日−2012年に二酸化炭素排出制度を順守しなかったエアラインに対し必要な措置を講じるよう、航空関連EU ETS管理の責任があるドイツ、オランダ及び英国当局に対し、欧州の環境NGOが公式に要求した。中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空、インド航空、ジェットエアウェイズ、サウディアそしてアエロフロートを名指しで、2013年4月30日の期限までにこれらのエアラインが、欧州内フライトが規制対象となる2012年の二酸化炭素排出枠を提出していないとNGOは指摘している。2012年に欧州を離発着した大陸間便による二酸化炭素排出量を報告する必要がエアラインにはあるのだが、国際的な反対に遭ったEUが、市場に基づく国際的な対策に関する合意をICAOで得るための進展が可能になるようにと、『時計を止める』適用制限の下で一時的にその排出量報告の要件適用を保留した。しかし、国籍にかかわらずエアラインは欧州内のフライトに関しては、EU ETS制度を順守することが変わらず求められていた。規則の公平な一貫した執行がなされないなら、規則を守るエアラインに対し違反しているエアラインの方が競争上の優位性を得ることになるとNGOは指摘している。
 Transport & Environment(T&E), Aviation Environment Federation, Natuur en MilieuおよびBUNDのNGOは、国際的な二酸化炭素排出規制計画に合意が得られるのだろうかと疑問を投げ、もし合意を得られても、その合意には実質的な影響力があるのだろうかと疑問を投げ、欧州のETS制度こそが航空排出物に対処するために実施される唯一の国際的対策なのだと彼等は主張している。「ETSを部分的に実施する、或いは恣意的で差別的なやり方で実施するのでは意味が無く、EUの立場が国際的に弱体化することになる。」と、これらNGOは声明で述べた。

 T&Eの航空担当のBill Hemmings氏は付け加えた。:「外国のエアラインがEU ETSの順守期限を破ってから約1年がたとうとしているのに、これまでEU加盟国政府がEU法を執行していないとは恥ずべきことだ。法を執行しないということは、法を順守して運航している運航者に対し、違反している運航者の方が競争的優位に立つということで、外国エアラインにとってEU法の順守は任意であるというメッセージを外国政府が受け取ることになる。だから、違反している運航者がEUのやり方に異を唱えるある国のフラッグキャリアであろうが、小規模な地域運航者であろうが、ビジネスジェットであろうが、EU加盟国は一貫性のある公平なやり方でETSの順守を強制しなければならない。」

 1年間はEEA内部を規制対象とするという、EU ETS法の適用制限の順守を拒んだエアラインについてEUの政治家らは不快感を表してきた。欧州議会、欧州委員会及びEU加盟国を代表する欧州連合理事会の間で現在、EU ETS制度の次の段階について交渉が行われているところである。これら3機関は異なる立場で三者会談に参加した。加盟国は『時計を止める』適用制限の修正版の継続を希望し、欧州委員会と欧州議会はEEA空域内の全便の排出物まで規制対象を拡大する案を強く押している。

 欧州議会の議員らはEU加盟国の圧力に屈する代わりに譲歩を引き出したがっている。自国のエアラインにEU ETS制度の順守を禁じたインドや中国のような国家のエアラインに対して罰則を課すという政治的に微妙な問題があっても、ETSを順守しないすべての航空機運航者に対し加盟国は速やかな措置を講じるべしというのがその要求の一つである。ETS法の欧州議会の報告責任者であるドイツ人の欧州議会議員Peter Liese氏は、EU加盟国が法の執行のために十分な措置を取らない場合は、三者会談の交渉を頓挫させると言って脅した。順守を強制しないEU加盟国を裁判にかける権限が欧州委員会にはある。

 先週、EUの管理当局は協調努力の一環として、非順守の違反者に執行通知を発送したとみられているが、どのエアラインにこれらの通知が送付されたのかはこれまで公表されていない(記事を参照のこと)。


リンク

NGOの声明文

海外情報紹介 EU ETSを順守しない航空機運航者はEU加盟国から施行命令が出されて50万ユーロの罰金を課される

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1827

EU ETSについて(環境省):
http://www.ets-japan.jp/ovs/ovs_4_2.html

 2014年2月24日月曜日−EU加盟国間の調整作業の一環として、2012年のEU ETS規制を順守していないエアラインやビジネスジェットの運航者にはこれまでに通知が送付された。欧州に拠点を置くある商用ビジネスジェットの所有者は英国の当局から2013年4月30日の期限までに必要な数の排出枠を放棄しなかったことで総額約50万ユーロになる罰金を課されたと言われている。各加盟国は法の執行の仕方が法律上で異なっており、他の加盟国が非順守の運航者すべてに通知を送付しているのに対し、英国は段階的アプローチを選択し、今のところほんの一握りの運航者に警告している。政治的な意志を試される場面として、いくつかのEU当局は、2012年に欧州内でフライトを運航しながらEU ETSの『時計を止める』適用制限に従わなかった中国、インドそしてロシアの運航者に罰則を課すべき立場に立たされている。
 ETS制度の下で2012年には、規制対象となる全炭素排出量の98%の排出源である航空機運航者が規制を順守したと、たとえ欧州委員会が報告しても、欧州を離発着する大陸間飛行の報告義務を一時的に保留する『時計を止める』適用制限が、順守しない運航者の数の解明を困難にしてきた。加盟国においてEU ETS制度の管理を担当する所轄官庁(CAs)は、そのような情報をなかなか開示しようとしなかった。

 加盟国は規制対象となる排出量を報告しない航空機運航者について1トンのCO2につき100ユーロ(米ドルで140ドル)の罰金を課す義務がある。「政治的便宜をはかるために加盟国が法定の罰則適用をただ差し控えることは不可能であり、程なくある時点で、EU規則の下で、非順守の運航者すべての名前を明らかにして恥ずべきものにしなければならない。」とAvocet Risk Management社のCEOであり、航空関連EU ETS順守に関する専門家であるBarry Moss氏が語った。

 罰金に加えて、英国のような加盟国数カに国は、罰金が支払われない場合に航空機の拘留、差し押さえ及び売却の最終権限があると、Moss氏は述べた。

 EU加盟国はまた、この問題が遅滞していると見なしているので機嫌が悪いEUの政治家らの圧力にさらされて行動を起こす予定である。欧州議会の環境委員会の最近の会合で、上級の欧州議会議員が、ETS指令を順守しない運航者については加盟国が速やかに対応するよう要求し、もし対応をしない場合には、航空関連EU ETSの将来の計画に関する加盟国との現在の三者会談交渉を頓挫させると脅した(記事を参照のこと)。

 2012年の要件を順守しない運航者がどれだけあるのか不明確であっても、欧州内で付属書1のフライトを運航する運航者はすべて航空機運航者保有口座(AOHA)の開設が必要で、各運航者の検証済み排出量についての情報とそれに対応するために提出された排出枠の情報はEU取り引き記録(EUTL)で入手可能である。

 「EUTLから我々にわかることは、ログの英国の欄に並んでいる422の運航者の内、エアライン2社を含めた、少なくとも40の運航者が明らかに2013年の期限までに2012年の排出量の排出量報告を行っていないか或いは十分な排出枠を放棄していない。」とMoss氏が報告した。「多くの場合EUTLは多くの運航者に対し適合性の区分を割り当てていないか、記録では単に一致しないから実際のデフォルト率は疑いなくずっと高くなるだろう。」

 英国の所轄官庁である環境庁は他の加盟国と比べてずっと多くの努力と資金をETS順守のためにつぎ込んできたと彼は指摘している。「EU加盟国数カ国ではデフォルト率は50%に近いと言われているが、公有財産の情報が無いので、実際の数字を独自に検証する方法が我々には無い。」

 「それに加えて、AOHAを開設していないという単純な理由で、EUTLに載っていないだけという航空機運航者が何百もある。欧州委員会が公表した最新リストの運航者の数は約3,750に上るのに対して、EUTLに載っている運航者は約1,280である。多くの運航者が『時計を止める』適用制限の恩恵を受けたかまたは2012年には欧州へ飛来する便が無かった可能性があり、他の理由で適用対象外となる可能性、或いはもう運航者が存在しない可能性もあり、数字には大きな不整合がある。」

 そのほとんどが不履行者となっている、CO2の年間排出量が1,000トンに満たない、2,000を超える小規模運航者を規制するという管理上の負担を所轄官庁が避けようとするのは理解できるとMoss氏は述べた。その分類に入らない、非商用運航者を規制対象外にすることは三者会談の討論の中で検討中である。

 50万ユーロ(米ドルで68万ドル)まではいかない罰金通知が英国当局から届いた航空機運航者の場合、運航者は必要な数の排出枠は購入したが、4月30日の期限までに放棄しなかったと考えられている。5月の早い時期に運航者が欧州連合の登録簿にログインしようとした時には、システムはもはや排出枠の放棄を受け付けなかった。

 「これまでの数ヶ月間、ドイツに報告を出した運航者のいくつかもまた、DEHStすなわちドイツの所轄官庁から罰則の警告を受け取ったが、大部分は全く取るに足らない誤りのせいだった。」とVerifavia社のCEOであるJulien Dufour氏が報告した。「例えばある運航者が数字を丸めたことで二酸化炭素の排出枠を放棄しなかったので、100ユーロの罰金が課されると告げられた。しかしこれらの例ではすべて、ETS指令を順守しないのは純粋な誤りのせいであると運航者が立証できる場合には、関連する所轄官庁は罰則の権利放棄を受け入れるだろうと思われる。」

 その一方で米国エアラインの事業者団体である米国エアライン協会(A4A)は、先週、2012年のETS指令の非順守運航者に関し、米国のエアラインは罰則の権利放棄を要求するようだと報告したロイターのニュースとは距離を置いた。

 「2012年の法の執行の軽減もしくは早い時期の義務の軽減を我々は求めているわけではない。欧州議会と欧州連合理事会が『時計を止める』適用制限の延長の可能性を考えている間は、2013年のフライトについては、EU ETSの完全実施というEU域外への規制適用に関する実施期限は効力を生じないと明確にすることを求めているのである。」とA4Aの環境関連の統括責任者であるNancy Young女史はGreenAir紙に語った。

 A4Aの会員はEU ETS制度が航空へ適用開始された当初から完全に制度を順守してきたと彼女は付け加えた。「いかなる状況下であれ、国際線を運航するエアラインに登録国の合意無くEUがETSを適用することについては、我々は引き続き疑問を呈する一方、EU ETS制度のEU内での適用には異を唱えることはなかったし、当協会の会員エアラインは『時計を止める』適用制限下ではEU ETSを順守した。」

リンク:

欧州委員会−EU ETSにおける航空
Avocet Risk Management社
Verifavia社
米国エアライン協会 (A4A)

海外情報紹介 EU ETSを順守しない航空機運航者はEU加盟国から施行命令が出されて50万ユーロの罰金を課される

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1827

EU ETSについて(環境省):
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/mrv-library/5.mrvprograms.html

 2014年2月24日月曜日−EU加盟国間の調整作業の一環として、2012年のEU ETS規制を順守していないエアラインやビジネスジェットの運航者にはこれまでに通知が送付された。欧州に拠点を置くある商用ビジネスジェットの所有者は英国の当局から2013年4月30日の期限までに必要な数の排出枠を放棄しなかったことで総額約50万ユーロになる罰金を課されたと言われている。各加盟国は法の執行の仕方が法律上で異なっており、他の加盟国が非順守の運航者すべてに通知を送付しているのに対し、英国は段階的アプローチを選択し、今のところほんの一握りの運航者に警告している。政治的な意志を試される場面として、いくつかのEU当局は、2012年に欧州内でフライトを運航しながらEU ETSの『時計を止める』適用制限に従わなかった中国、インドそしてロシアの運航者に罰則を課すべき立場に立たされている。
 ETS制度の下で2012年には、規制対象となる全炭素排出量の98%の排出源である航空機運航者が規制を順守したと、たとえ欧州委員会が報告しても、欧州を離発着する大陸間飛行の報告義務を一時的に保留する『時計を止める』適用制限が、順守しない運航者の数の解明を困難にしてきた。加盟国においてEU ETS制度の管理を担当する所轄官庁(CAs)は、そのような情報をなかなか開示しようとしなかった。

 加盟国は規制対象となる排出量を報告しない航空機運航者について1トンのCO2につき100ユーロ(米ドルで140ドル)の罰金を課す義務がある。「政治的便宜をはかるために加盟国が法定の罰則適用をただ差し控えることは不可能であり、程なくある時点で、EU規則の下で、非順守の運航者すべての名前を明らかにして恥ずべきものにしなければならない。」とAvocet Risk Management社のCEOであり、航空関連EU ETS順守に関する専門家であるBarry Moss氏が語った。

 罰金に加えて、英国のような加盟国数カに国は、罰金が支払われない場合に航空機の拘留、差し押さえ及び売却の最終権限があると、Moss氏は述べた。

 EU加盟国はまた、この問題が遅滞していると見なしているので機嫌が悪いEUの政治家らの圧力にさらされて行動を起こす予定である。欧州議会の環境委員会の最近の会合で、上級の欧州議会議員が、ETS指令を順守しない運航者については加盟国が速やかに対応するよう要求し、もし対応をしない場合には、航空関連EU ETSの将来の計画に関する加盟国との現在の三者会談交渉を頓挫させると脅した(記事を参照のこと)。

 2012年の要件を順守しない運航者がどれだけあるのか不明確であっても、欧州内で付属書1のフライトを運航する運航者はすべて航空機運航者保有口座(AOHA)の開設が必要で、各運航者の検証済み排出量についての情報とそれに対応するために提出された排出枠の情報はEU取り引き記録(EUTL)で入手可能である。

 「EUTLから我々にわかることは、ログの英国の欄に並んでいる422の運航者の内、エアライン2社を含めた、少なくとも40の運航者が明らかに2013年の期限までに2012年の排出量の排出量報告を行っていないか或いは十分な排出枠を放棄していない。」とMoss氏が報告した。「多くの場合EUTLは多くの運航者に対し適合性の区分を割り当てていないか、記録では単に一致しないから実際のデフォルト率は疑いなくずっと高くなるだろう。」

 英国の所轄官庁である環境庁は他の加盟国と比べてずっと多くの努力と資金をETS順守のためにつぎ込んできたと彼は指摘している。「EU加盟国数カ国ではデフォルト率は50%に近いと言われているが、公有財産の情報が無いので、実際の数字を独自に検証する方法が我々には無い。」

 「それに加えて、AOHAを開設していないという単純な理由で、EUTLに載っていないだけという航空機運航者が何百もある。欧州委員会が公表した最新リストの運航者の数は約3,750に上るのに対して、EUTLに載っている運航者は約1,280である。多くの運航者が『時計を止める』適用制限の恩恵を受けたかまたは2012年には欧州へ飛来する便が無かった可能性があり、他の理由で適用対象外となる可能性、或いはもう運航者が存在しない可能性もあり、数字には大きな不整合がある。」

 そのほとんどが不履行者となっている、CO2の年間排出量が1,000トンに満たない、2,000を超える小規模運航者を規制するという管理上の負担を所轄官庁が避けようとするのは理解できるとMoss氏は述べた。その分類に入らない、非商用運航者を規制対象外にすることは三者会談の討論の中で検討中である。

 50万ユーロ(米ドルで68万ドル)まではいかない罰金通知が英国当局から届いた航空機運航者の場合、運航者は必要な数の排出枠は購入したが、4月30日の期限までに放棄しなかったと考えられている。5月の早い時期に運航者が欧州連合の登録簿にログインしようとした時には、システムはもはや排出枠の放棄を受け付けなかった。

 「これまでの数ヶ月間、ドイツに報告を出した運航者のいくつかもまた、DEHStすなわちドイツの所轄官庁から罰則の警告を受け取ったが、大部分は全く取るに足らない誤りのせいだった。」とVerifavia社のCEOであるJulien Dufour氏が報告した。「例えばある運航者が数字を丸めたことで二酸化炭素の排出枠を放棄しなかったので、100ユーロの罰金が課されると告げられた。しかしこれらの例ではすべて、ETS指令を順守しないのは純粋な誤りのせいであると運航者が立証できる場合には、関連する所轄官庁は罰則の権利放棄を受け入れるだろうと思われる。」

 その一方で米国エアラインの事業者団体である米国エアライン協会(A4A)は、先週、2012年のETS指令の非順守運航者に関し、米国のエアラインは罰則の権利放棄を要求するようだと報告したロイターのニュースとは距離を置いた。

 「2012年の法の執行の軽減もしくは早い時期の義務の軽減を我々は求めているわけではない。欧州議会と欧州連合理事会が『時計を止める』適用制限の延長の可能性を考えている間は、2013年のフライトについては、EU ETSの完全実施というEU域外への規制適用に関する実施期限は効力を生じないと明確にすることを求めているのである。」とA4Aの環境関連の統括責任者であるNancy Young女史はGreenAir紙に語った。

 A4Aの会員はEU ETS制度が航空へ適用開始された当初から完全に制度を順守してきたと彼女は付け加えた。「いかなる状況下であれ、国際線を運航するエアラインに登録国の合意無くEUがETSを適用することについては、我々は引き続き疑問を呈する一方、EU ETS制度のEU内での適用には異を唱えることはなかったし、当協会の会員エアラインは『時計を止める』適用制限下ではEU ETSを順守した。」

リンク:
欧州委員会−EU ETSにおける航空
Avocet Risk Management社
Verifavia社
米国エアライン協会 (A4A)

海外情報紹介 EU ETSの「時計を止める」適用範囲を2016年まで延長する協定の実現へと少し近づいたが、収入の割当には赤線が引かれている。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1825

 2014年2月21日金曜日−欧州委員会の代表を含め、欧州議会(EP)そして欧州連合理事会に代表されるEU加盟国が参加する、航空関連EU ETSをこれからどうするかについて合意を得るための、第一回目の今週の三者会談は、結果的にいくつかの課題については意見の隔たりを埋めることができたが、隔たりが埋まらないままの問題は残っている。大陸間便については『時計を止める』(STC)という適用制限を行うのは2012年のみで、EU機関が炭素排出量規制制度の運用について合意を得られなければ、国際的論争が再燃するのを念頭に置いた上で、自動的にEU指令の元来の完全実施範囲に戻ることだろう。EU加盟国がSTCの規制範囲の修正版を支持する一方で、EU指令を先導する立場にある欧州議会の環境委員会は、EEA空域内を飛ぶ全便を規制するという欧州委員会提案を支持している。欧州議会の交渉担当者が2016年まではSTCを進んで受け入れる代わりに、ETSの取り引きによる収入を気候対策目的に割り当て、排出量の上限を厳しくするよう加盟国に要求しているようにみえる。  EU加盟国−特に第三国の圧力の影響を受けやすいエアバス社の製造業の株式を持つフランス、ドイツそして英国は、ICAOによる市場に基づく国際対策(MBM)の施行が見込まれている2020年までSTCを継続することを望んでいる。ドイツ人の欧州議会議員であるPeter Liese氏が三者会談の行程を先導している欧州議会との歩み寄りが可能なのは、2016年の終わりまで修正版STCを継続し、ICAOが2016年遅くに開催される総会で国際的MBM実施のための国際的合意を取りまとめられなかった場合、2017年からEU ETSを完全実施に戻すという案でだろう。

 「欧州連合理事会はSTCを2016年まで現在のままの適用制限内容で延長することを強硬に主張している。」と会議後にLiese氏は報告した。「そこで我々はある提案を行った。:我々(欧州議会議員)がこれを了承するのは、将来のETSの収入を気候変動対策に割り当てることを含めた包括提案の部分としてのみである。収入の使途を定めればETSに関する第三国との現在の信頼の危機は打開可能だと考えている。」

 しかし、2008年に初めてETS指令が成立した時、欧州議会が類似の要求を行ったが加盟国は拒否し、この件は特に英国にとっては譲れない一線だと見られている。ETS指令には排出枠取り引きの収入は、温室効果ガス排出物の低減のための努力、EUや第三国における気候変動適応のため、及び排出物を出さない輸送の研究開発のために「使用されるべきである」とは書かれているが、使用目的の決定は個々の加盟国の判断に委ねられている。

 「これは高度に政治的な論点である。」と欧州議会の環境委員会の委員長であるMatthias Groote氏は述べた。「現時点では、ETSの収入はEUの大臣らの懐に消えているが、気候変動対策の支援金として使われているだろうと推測される。その代わりにこの資金を、例えばGreen Climate Fundに割り当てて欧州地域の研究開発のために使うことができるだろうと考える。そうすれば2015年にパリで話し合いが行われる予定のUNFCCCに先立ち、EUがこの問題を真剣に考えていることを我々の同盟国に対して示すことになるだろう。」

 そして、年間のCO2排出量が1,000トンに届かない、ビジネスジェットのような非商用飛行の小規模運航者は、総計でかなりの数になるのだが、規制対象になるCO2排出量はほんのわずかなので、管理上の負担が重くなることが大きな理由で、恒久的にEU ETSの規制対象から外すことをEU加盟国は望んでいる。それ以上に政治的理由で、加盟国はEEA内のフライトについて年間CO2排出量が500トンに満たない小規模商用運航者は規制対象外にすることを望んでいる。これにより、例えば不定期にEEA内でpositioning flights(フェリー便?)を運航するような第三国からのエアラインを除外することになり、自国のエアラインにSTCの適用範囲でさえ順守しないよう指示している国家との衝突の可能性を回避することになる。

 欧州議会の議員らは、1,000トンに満たない非商用運航者の一時的適用除外には耐えられても、商用運航者のde minimisな適用除外には耐えられないだろうと思われる。

 「欧州議会の委任により2016年までは空域で規制するという我々の立場を断念する方向へ大きく舵を切ることになった。」と会議の後、Liese氏とGroote氏は声明を述べた。「今やボールは欧州連合理事会のコートにある。欧州連合理事会が我々の 提案を拒否するなら、交渉が完全に行き詰まる危険性を冒すことになり、欧州連合理事会はその責任をとらねばならなくなるだろう。」

 次回の三者会談は3月4日に行われる。

海外情報紹介 ユナイテッド航空はホットドリンク用カップを、ペットボトルをリサイクルした100%再生利用可能なカップに置き換える予定である。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1823

 2014年2月18日火曜日−ユナイテッド航空は、現在使用しているホットドリンク用の再生利用不能な発泡スチロール製カップを、最大50パーセントまで再利用材料を使用して作った100パーセント再生利用可能なカップに置き換える予定である。環境に優しいInCycle断熱カップは、ワシントンに本拠を置くMicroGREEN社が水を使用しない、無添加の再生処理工程によって、ミネラルウォータ用ペットボトル1本の再生利用で最低でも4個のカップを製造している。InCycleカップはすでにアラスカ航空で使用されており、このリサイクル技術は革新的な環境技術に関する賞を数多く受賞している。ユナイテッド航空によると、自社の業務体系内で廃棄物を減らし、再生利用を増やすため、日常業務における再生利用の努力を見直しているところであるとのことだ。この見直しには客室乗務員のために手順を単純化するためと、再生利用する物品量を増やし廃棄物を減らすために、エアラインの機内の再生利用方針と手順を設計し直すことが含まれる。
 「ユナイテッド航空では、自社製品の持続可能性を改善し、同時に廃棄物を減らすために日々努力している。」とユナイテッド航空の地球環境問題と持続可能性担当責任者であるAngela Foster-Rice女史は言った。「この新しいカップは環境に対しては終始、悪影響は及ぼさないという当社の誓約の順守であるのみならず、お客様がユナイテッド航空便を利用して空を飛ぶことを快適に感じるためのもう1つの可能性である。」

 InCycleカップは今月、ユナイテッドクラブの飲み物サービスに導入され、3月半ばからユナイテッド航空の機内で使用されることになっている。

 MicroGREEN社によれば、断熱カップは現在のカップと比較して強度は変わらず重さが50%から80%軽く、カップの微細構造によって固形プラスチックより耐久性が強化されているとのことだ。製造工程は化学的発泡剤を使用せずにPETの軽量化を実現し、プラスチックは化学的に変化しないので、寿命がつきるまで再生利用が可能である。ワシントン大学を卒業した研究者達が2006年に興した会社であるMicroGREEN社によれば、この技術は原材料費を引き下げ、機能性を改善する一方で重量を減らすとのことである。

 過去6年間に渡り、ユナイテッド航空は機内や自社施設から出た廃棄物のうち、2,350万ポンド(10,600トン)のアルミ缶や紙やプラスチックをリサイクルした。

 ユナイテッド航空はまた、2013年に811,643トンのCO2排出を減らし、燃料効率改善の取り組みによって燃料消費を9,500万ガロン減らして、8,500万ガロンの燃料消費削減目標を上回った。

リンク:

ユナイテッド航空−InCycleカップについてのビデオ

ユナイテッド航空−Eco-Skies

MicroGREEN社

海外情報紹介 エアラインがEU ETSを順守しないので、EU加盟国との間の航空に関わるEU ETS交渉を頓挫させると怒りの欧州議会議員が脅す。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1816

 2014年1月29日水曜日−欧州議会の政治家達はEU加盟国に対し、2012年にEU ETSを順守できなかったエアラインに厳しく対応するよう要求した。航空関連EU ETSの欧州議会の報告責任者であるPeter Liese氏は、強制措置が取られない場合は、加盟国を代表する欧州連合理事会との、欧州指令の将来に関する今後の交渉を頓挫させると脅した。EU加盟国、特にフランス、ドイツそして英国がETSの規模縮小を望んでいるのに対し、Liese氏と欧州議会議員の大部分が欧州委員会によるETSの空域規制提案を支持しているので、三者会談のプロセスは難しいものになると予想されている。中国、インドそしてサウジアラビアのエアラインは、2012年にEU内フライトの運航をしながらETSを順守しなかったとして名指しされた。その一方でEUの所轄官庁は、2013年にEU/EEAを離発着するフライトと、EU/EEA内部を飛行するフライトを運航するすべての航空機運航者は、3月31までに完全施行の場合の対象範囲で排出物報告を行うよう助言している。
 欧州委員会によれば、航空関連EU ETSの1年目の順守の状況は、EU/EEA内の『時計を止める』(STC)規制範囲による1年間の適用制限下で、全CO2排出物の98%に達したとのことだった。しかし、『政治的な動機で』順守しなかった多くのエアラインがあったことを、先週木曜日の欧州議会環境委員会(ENVI)の会議の席上で、欧州委員会のElina Bardram女史が報告した。

 法の実施は各EU加盟国の責任であり、実施のスケジュールは加盟国毎に異なるが、今までのところ期限は破られていないと、彼女は言った。欧州委員会は加盟国が実施の調整を行うことに同意し、2013年6月に、中国のエアラインを含め、EU ETSを順守しない航空機運航者に対して正式な通知が送付された。EUレベルでは、昨年10月のICAO総会以前には罰金は課さないという合意ができていたと、彼女は付け加えた。

 「それ以降は、我々は2月20日に次なる施行段階に移ることを目指すという一般合意が出来ている。」と彼女は欧州議会議員に語った。「EU法を実施するという加盟国の誓約を疑う理由は欧州委員会には無い。これは、法律の施行が加盟国によって最後まで順守されない場合に違反措置を取ることを我々はためらわないという意味だ。」

 どの加盟国がEU ETS指令を実施していないのか教えるよう請求して適えられず、「完全に不満足な」状況であることについて欧州委員会と加盟国を非難した、ENVI委員会の委員長であるMatthias Groote氏を含め、この報告ではENVIの欧州議会議員をなだめられなかった。

 実施状況についての問いを投げたSatu Hassi氏は、EU以外の国家からの圧力でEU ETSの規制対象が狭まったので、非EU運航者は欧州連合内で運航する場合はせめて順守すべきであると述べた。

 Liese氏は、委員会の席上で、そもそも2007年の立法化の最初から、EU法を順守しないエアラインからは運航ライセンスを取り上げるべきだと、欧州連合理事会を通じて言い張っていたのは加盟国だと述べた。

 「現在の法律が実施されているのかどうかさえ全くわからない状況では、[欧州委員会と欧州連合理事会との]三者会談で結論を出せるとは思えない。この件に関して加盟国があまりにも関心を払わないので、率直に言ってショックを受けている。」と彼は述べた。

 記者会見で、Liese氏は付け加えた。:「我々が欧州連合理事会と欧州委員会との交渉を進めるにあたり、EU指令の現在の「時計を止める」適用範囲が順守されていることは大変重要である。加盟国と欧州委員会が現在の法律を実施してこそ、可能な修正に関する必要手順について話し合いができるのだという、我々欧州議会からの強いメッセージになる。

 「我々が法律を修正しなければ、EU指令の完全実施に戻ることになるだろう。」

 現在のSTC指令が4月終わりに期限切れになるまでに、EU機関が妥協点を見つけられないことはありそうもないが、航空関連EU ETSを管理する責任がある加盟国の、たとえすべてではなくとも大部分の所轄官庁は、その管理下にある全航空機運航者に対し、3月31日(スペインの場合は2月28日)の期限までに、ETS指令の完全実施の範囲に沿った排出物報告を行うよう、勧告してきた。小規模運航者と後発開発途上国のエアラインを新規に対象外にすることを可能にすると同様に、2013年の排出物報告と排出枠の放棄を1年間先送りすることを可能にする欧州委員会の提案にもかかわらずである。

 所轄官庁の勧告がそれぞれ異なっていて、完全実施の場合の付属書1の排出物報告を3月31日までに行わないことでどこまで運航者が罰せれるかは不透明である。フランスのDGACは、望むなら運航者は報告できるが、期限までに報告をしなくても罰せられないだろうとこれまでに述べている。

 英国環境庁はそれよりは厳しい方針で、サーキュラーで以下のように勧告している。:「現在の英国とEUの法は変更されるまでは効力を持ち続け、検証済みの排出報告を2014年3月31日までに提出できないなら、そして2014年4月30日までに排出枠を放棄しなければ、罰則が課される。変更されないなら、そして変更されるまでは、2013年について報告と放棄の義務はETS指令の完全施行範囲についてであり、EEAを離発着するフライトを含む。」

 ウェブサイト上で大部分の所轄官庁の最近の指針を公表した、検証企業であるVerifAviaのJulien Dufour氏は助言している。:「提案された新しい法律の最終投票は2014年4月に予定されているので、報告が要求される後で排出枠の放棄を要求される以前に、もし新しいETS指令が成立する時は、運航者は正確な量の排出枠を放棄するために、報告の規模を適切な地理的範囲まで(例えばEEA内とか)縮小することが可能になるだろう。」

 「従って、2015年3月までの再提出については付属書1の欧州内での排出量の報告まで対象を狭めるという選択肢を持ちつつ、2014年3月31日以前は付属書1の完全な対象範囲を報告する計画を立てるよう、運航者に我々は推奨する。さらに、過剰放棄を避けるために、欧州連合の登録簿に排出量を記入して放棄するのは新規ETS指令が成立するまで待つよう運航者には勧めている。」

 PwC(訳注:世界4大会計事務所の1つ)のDennis Mes氏は付け加えた。「来たる期限への時間が短くて、我々はすべての顧客に対し、違反の危険を避けるために現在の期限内に完全施行の対象範囲で排出物の検証を行う準備をするよう助言している。要件については進展状況を密接に追っているので、所轄官庁或いは欧州委員会による指導に基づき、あり得る変更の影響に関して我々は顧客に情報を流すだろう。」

 ENVIの欧州議会議員は明日(1月30日)、輸送委員会と産業委員会の委員の反対意見を考慮しながら、欧州委員会提案とENVI独自の修正案について投票を行うところである(記事を参照のこと)。欧州連合理事会との三者会談での討論はその後引き続き2月中に行われ、3月にはEUの運輸大臣と環境大臣会合が行われる。3機関の間で合意が得られるならば、欧州議会全体での投票が4月半ばに行われることになっている。

リンク:

ETS指令の非順守と強制措置の議題に関するENVI会議(11:00:37開始)

EU指令の順守に関するPeter Liese氏の声明が行われた記者会見(9:46:45開始)